[14/50]生徒への重い懲戒である退学・停学・訓告は校長が行う。また、義務教育の停学は絶対できない

まず懲戒について述べた条文を二つ紹介する。

児童・生徒・学生への懲戒(学校教育法第11条)

校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。

懲戒はすごく重そうな響きだが、実際には普段から行われる注意や叱責の意味も含む。生徒目線で言うと「先生に怒られた〜」となるものも懲戒の一種なのである。 懲戒は校長・教員両方が生徒に対して行うことができる。上の文の最後にある、体罰はダメとなっているのは常識だろう。

次にもっと"重い"懲戒である、退学・停学・訓告の処分は、ふつうの教員が行うのはダメで、校長しか行えない。

学校教育法施行規則第26条第2項

懲戒のうち、退学、停学及び訓告の処分は、校長(大学にあつては、学長の委任を受けた学部長を含む。)が行う。

では、ここからは義務教育段階での退学・停学についての扱いを確認ししよう。まず、大前提として、義務教育段階の子どもには、憲法にもある通り、普通教育を受けさせる義務がある。よって、「停学」については「あなたの学ぶ機会を一時停止する」という懲戒であり、これを実施してしまうと憲法の規定に反することになる。すなわち、義務教育期間中の子どもに、停学の処分を行うことはできない(施行規則第26条第4項)。

では次に退学の話。退学については以下の4条件のどれかに該当している必要があある。

学校教育法施行規則第26条第3項

前項の退学は、市町村立の小学校、中学校(学校教育法第七十一条の規定により高等学校における教育と一貫した教育を施すもの(以下「併設型中学校」という。)を除く。)若しくは義務教育学校又は公立の特別支援学校に在学する学齢児童又は学齢生徒を除き、次の各号のいずれかに該当する児童等に対して行うことができる。
① 性行不良で改善の見込がないと認められる者
② 学力劣等で成業の見込がないと認められる者
③ 正当の理由がなくて出席常でない者
④ 学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者

「退学」と聞くと、ワルさを働いた子どもに対して行う、というイメージがあるかもしれないが、それ以外にも、②・③のように、成績・出席面でも退学の条件になるのである。

ここで、さきほどもお話しした、義務教育段階における対応を確認しよう。停学は義務教育段階では絶対にできないということをすでに述べたが、退学については行える場合がある。「え!退学の方が重い処分なのに、できるの!?」と思われるかもしれないが、重い軽いで判断するのではなく、「教育を受ける権利」が保障されるかがポイントとなる。

例えば、中等教育学校、併設型中学校、国立・私立の義務教育諸学校については、退学になったとしても、教育委員会の指定する市町村立の学校に就学することが可能。つまり、退学になったとしても、その後公立学校へ転校によって教育を受ける権利が確保されているため、結果として、義務教育段階でも退学の懲戒が可能となるのである。

では演習。

演習問題

次の文の正誤判定をせよ。
(1) 校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、児童・生徒に対し、懲戒として退学、停学及び訓告などの 処分を加えることができるが、体罰を加えることはできない。
(2) 学齢児童又は学齢生徒に対する懲戒のうち、退学の処分を行うことはできないが、停学の処分については行うことができる。
(3) 公立の中等教育学校における、学力劣等で成業の見込みがないと認められる生徒に対する懲戒については、退学の処分は、前期課程及び後期課程のいずれの課程でも行うことができる。

解説

今回は以上。おつかれさまでした。

前の記事へ
[13/50]感染症の出席停止は校長が行い、感染症予防のための臨時休業は学校の設置者が行う
次の記事へ
[15/50]性行不良による出席停止の要件は、「性行不良」かつ「他の児童生徒の教育の妨げになる」こと
本シリーズの記事一覧へ
[教職教養]基礎50
トップページへ
きょうさい対策ブログ
(お知らせ)2025年実施教採向け 動画講座は12月初旬にリリース予定です。