[33/50]特別支援教育関係。発達障害の種類、その他知識(委員会、コーディネーター、個別の教育支援計画など)

今回は特別支援教育関係を少し。

発達障害

まずは、発達障害の種類について整理を。ここでは「障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて~」(令和3年6月文部科学省初等中等教育局特別支援教育課)で示されているものに絞って確認する。

主な発達障害の説明

  1. 自閉症とは,①他者との社会的関係の形成の困難さ,②言葉の発達の遅れ,③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする発達の障害である。その特徴は3歳くらいまでに現れることが多いが,成人期に症状が顕在化することもある。中枢神経系に何らかの機能不全があると推定されている。
  2. 学習障害とは,全般的に知的発達に遅れはないが,聞く,話す,読む,書く,計算する又は推論するといった学習に必要な基礎的な能力のうち,一つないし複数の特定の能力についてなかなか習得できなかったり,うまく発揮することができなかったりすることによって,学習上,様々な困難に直面している状態をいう。
  3. 注意欠陥多動性障害とは,身の回りの特定のものに意識を集中させる脳の働きである注意力に様々な問題があり,又は,衝動的で落ち着きのない行動により,生活上,様々な困難に直面している状態をいう。

学習障害はLD、注意欠陥多動性障害はADHDなどと表記する。

なお、高機能自閉症とは,知的発達の遅れを伴わない自閉症を指す。同様に,アスペルガー症候群(アスペルガー障害)は,自閉症の上位概念である広汎性発達障害の一つに分類され,知的発達と言語発達に遅れはなく,上記三つの自閉症の特性のうち,②の言葉の発達の遅れが比較的目立たない。

補足:用語「自閉症」について

特別支援教育の推進について(通知)

2007年、文部科学省から「特別支援教育の推進について(通知)」が出され、従来の"特殊教育"から、特別支援教育制度への転換がなされた。

1.特別支援教育の理念_特別支援教育の推進について(通知):文部科学省

特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものである。
また、特別支援教育は、これまでの特殊教育の対象の障害だけでなく、知的な遅れのない発達障害も含めて、特別な支援を必要とする幼児児童生徒が在籍する全ての学校において実施されるものである。
さらに、特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒への教育にとどまらず、障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ様々な人々が生き生きと活躍できる共生社会の形成の基礎となるものであり、我が国の現在及び将来の社会にとって重要な意味を持っている。

特別支援学校だけではなく、小学校や中学校などでも取り組みが必要なんですよ、と強調している。以下、同通知のうち「3.特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組」の内容を引用を続ける

3.特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組_特別支援教育の推進について(通知):文部科学省

(1) 特別支援教育に関する校内委員会の設置
各学校においては、校長のリーダーシップの下、全校的な支援体制を確立し、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒の実態把握や支援方策の検討等を行うため、校内に特別支援教育に関する委員会を設置すること。
委員会は、校長、教頭、特別支援教育コーディネーター、教務主任、生徒指導主事、通級指導教室担当教員、特別支援学級教員、養護教諭、対象の幼児児童生徒の学級担任、学年主任、その他必要と思われる者などで構成すること。
なお、特別支援学校においては、他の学校の支援も含めた組織的な対応が可能な体制づくりを進めること。

特別支援教育に関する委員会を設置することが求められている。そのメンバーは主に学校の教員。

3.特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組_特別支援教育の推進について(通知):文部科学省

(3) 特別支援教育コーディネーターの指名
各学校の校長は、特別支援教育のコーディネーター的な役割を担う教員を「特別支援教育コーディネーター」に指名し、校務分掌に明確に位置付けること。
特別支援教育コーディネーターは、各学校における特別支援教育の推進のため、主に、校内委員会・校内研修の企画・運営、関係諸機関・学校との連絡・調整、保護者からの相談窓口などの役割を担うこと。
また、校長は、特別支援教育コーディネーターが、学校において組織的に機能するよう努めること。

特別支援教育コーディネーターは各学校中の教員が担う。外部の人ではない。

3.特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組特別支援教育の推進について(通知):文部科学省

(4) 関係機関との連携を図った「個別の教育支援計画」の策定と活用
 特別支援学校においては、長期的な視点に立ち、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した教育的支援を行うため、医療、福祉、労働等の様々な側面からの取組を含めた「個別の教育支援計画」を活用した効果的な支援を進めること。
また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の教育支援計画」を策定するなど、関係機関と連携を図った効果的な支援を進めること。

(5) 「個別の指導計画」の作成
 特別支援学校においては、幼児児童生徒の障害の重度・重複化、多様化等に対応した教育を一層進めるため、「個別の指導計画」を活用した一層の指導の充実を進めること。
また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の指導計画」を作成するなど、一人一人に応じた教育を進めること。

長期的視点にたったものが「個別の教育支援計画」であり、平常の教育活動で使われるのが「個別の指導計画」である。なお、現時点では特別支援学校の児童生徒だけではなく、特別支援学級、通級による指導の児童生徒に対しても両資料の作成・活用の義務がある(学校教育法施行規則・学習指導要領)。

4.特別支援学校における取組_特別支援教育の推進について(通知):文部科学省

(2) 地域における特別支援教育のセンター的機能
特別支援学校においては、これまで蓄積してきた専門的な知識や技能を生かし、地域における特別支援教育のセンターとしての機能の充実を図ること。
特に、幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校の要請に応じて、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒のための個別の指導計画の作成や個別の教育支援計画の策定などへの援助を含め、その支援に努めること。
また、これらの機関のみならず、保育所をはじめとする保育施設などの他の機関等に対しても、同様に助言又は援助に努めることとされたいこと。特別支援学校において指名された特別支援教育コーディネーターは、関係機関や保護者、地域の幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び他の特別支援学校並びに保育所等との連絡調整を行うこと。

特別支援学校の機能が拡充され、特別支援学校でない学校在籍の発達障害の生徒等への支援も果たすことが求められている。

では演習。

演習問題

特別支援教育に関して、次の文の正誤判定をせよ。
(1) 各学校においては、課程および地域や医療、福祉、保健、労働等の業務を行う関係機関との連携を図り、長期的な視点で児童・生徒への教育的支援を行うことを目的とする個別の指導計画を作成しなければならない。
(2) 学校の設置者は、各学校における特別支援教育の推進を図るため、医師や臨床心理士等教育関係機関の専門家の中から、主に、校内委員会・校内研修の企画・運営、関係諸機関・学校との連絡・調整の窓口の役割を担う特別支援コーディネーターを指名しなければならない。

解説

今回は以上!

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