[34/50]いじめ防止対策推進法。いじめの定義、基本方針、防止のための2組織

現在35条の条文からなる、「いじめ防止対策推進法」について扱う。2011年の中学生いじめ自殺事件を受ける形で、「いじめ防止対策推進法」が2013年に制定された。今回は、その内容をピックアップして紹介する。

いじめの定義について

いじめの定義は頻出である。

いじめ防止対策推進法第2条第1項(定義)

この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。

かつては「学校としてその事実を確認しているもの」「攻撃を継続的に」「深刻な苦痛を感じているもの」などの表現があったが、それらは削除され、現在では上記のように、学校が把握しているしていないに関わらず、単発でも、当該の児童等が心身の苦痛を感じたら、法律上はいじめに該当する。

学校がやらなければならないこと

いじめ防止対策推進法第8条(学校及び学校の教職員の責務)

学校及び学校の教職員は、基本理念にのっとり、当該学校に在籍する児童等の保護者、地域住民、児童相談所その他の関係者との連携を図りつつ、学校全体でいじめの防止及び早期発見に取り組むとともに、当該学校に在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときは、適切かつ迅速にこれに対処する責務を有する。

「未然防止」「早期発見」「早期対応」の条文である。いじめ防止と早期発見に取り組みなさい、もし起きた場合はすみやかに対応せよ、ということである。

いじめ防止対策推進法第15条(学校におけるいじめの防止)

学校の設置者及びその設置する学校は、児童等の豊かな情操と道徳心を培い、心の通う対人交流の能力の素地を養うことがいじめの防止に資することを踏まえ、全ての教育活動を通じた道徳教育及び体験活動等の充実を図らなければならない。(以下略)

道徳や体験活動を充実させよ、ということ。

基本方針等

いじめ防止対策推進法第11条-13条

国 →いじめ防止基本方針(「いじめ防止等のための基本的な方針」)

地方公共団体 →地方いじめ防止基本方針 (努力義務)

学校 →学校いじめ防止基本方針

学校では、いじめ防止に向けた計画として、国や地方公共団体の基本方針を参考にして"学校版の"いじめ防止基本方針を作成する必要がある。

いじめ防止のための2つの組織

いじめ防止のために、"広域的に連携するための組織"と、"学校内の組織"を1つずつ紹介する。

いじめ防止のための2つの組織

いじめ防止対策推進法第14条第1項(いじめ問題対策連絡協議会)
地方公共団体は、いじめの防止等に関係する機関及び団体の連携を図るため、条例の定めるところにより、学校、教育委員会、児童相談所、法務局又は地方法務局、都道府県警察その他の関係者により構成されるいじめ問題対策連絡協議会を置くことができる。

いじめ防止対策推進法第22条(学校におけるいじめの防止等の対策のための組織)
学校は、当該学校におけるいじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、当該学校の複数の教職員、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係者により構成されるいじめの防止等の対策のための組織を置くものとする。

「いじめ問題対策連絡協議会」は学校や教育委員会、児童相談所など各機関で連携をとるために、地方公共団体が設置できる組織である。
また、「いじめの防止等の対策のための組織」は、各学校が必ず設置しなければならない組織である。校内の組織ではあるが、心理福祉等の専門家(スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー等)も構成員となる。

では演習!

演習問題

いじめ防止対策推進法に照らして、次の文の正誤判定をせよ。
(1) この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等と一定の人的関係にある、他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいい、インターネットを通じて行われるものは含まれない。
(2) 「学校におけるいじめの防止等のための組織」について、「学校は、当該学校におけるいじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係者により構成されるいじめ防止等の対策のための組織を置くものとするが、当該学校の教職員はこの組織の委員となることはできない」と示されている。
(3) 「公立の学校に係る対処」について「地方公共団体が設置する学校は、いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるときは、その緊急性から、当該地方公共団体の教育委員会を通さず、重大事態が発生した旨を、当該地方公共団体の長に報告しなければならない。」と示されている。

解説

今回はここまで!

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