[05/13]1.4 生徒指導の基盤

1.4生徒指導の基盤

1.4.1教職員集団の同僚性

組織的かつ効果的に生徒指導を実践するためには、教職員同士が支え合い、学び合う同僚性が基盤となります。教職員や専門スタッフ等の多職種で組織される学校がチームとして実効的に機能するには、職場の組織風土(雰囲気)が大切です。換言すると、学級・ホームルーム担任中心の抱え込み型生徒指導から、多職種による連携・協働型生徒指導へと転換していく際に重要となるのは、職場の人間関係の有り様です。

(1)教職員の受容的・支持的・相互扶助的な人間関係

組織的・効果的な生徒指導を行うには、教職員が気軽に話ができる、生徒指導実践について困ったときに、同僚教職員やスタッフに相談に乗ってもらえる、改善策や打開策を親身に考えてもらえる、具体的な助言や助力をしてもらえる等、受容的・支持的・相互扶助的人間関係が形成され、組織として一体的な動きをとれるかどうかが鍵となります。また、職能開発という点からも、教職員が絶えず自らの生徒指導実践を振り返り、教職員同士で相互に意見を交わし、学び合うことのできる同僚関係が不可欠です。

(2)教職員のメンタルヘルスの維持とセルフ・モニタリング

生徒指導を実践する上で、教職員のメンタルヘルスの維持は重要です。生徒指導では、未経験の課題性の高い対応を迫られることがあります。自分の不安や困り感を同僚に開示できない、素直に助けてほしいといえない、努力しているが解決の糸口がみつからない、自己の実践に肯定的評価がなされない等により、強い不安感、焦燥感、閉塞感、孤立感を抱き、心理的ストレスの高い状態が継続することがあります。この状態が、常態化するとバーンアウト(燃え尽き症候群)のリスクが高まります。

それに対して、受容的・支持的・相互扶助的な同僚性がある職場であれば、バーンアウトの軽減効果が期待されます。また、自分の心理状態を振り返る、セルフ・モニタリングも重要です。不安や苦しみを自覚したときに、一人で抱え込まず、SCも含めて身近な教職員に相談できる職場の雰囲気や体制の整備が求められます。

1.4.2生徒指導マネジメント 略

1.4.3家庭や地域の参画

生徒指導は、学校の中だけで完結するものではなく、家庭や地域及び関係機関等との連携・協働を緊密にし、児童生徒の健全育成という広い視野から地域全体で取り組む「社会に開かれた生徒指導」として推進を図ることが重要です。具体的な方法としては、以下の2点があります。

(1)コミュニティ・スクール

第一の方法としては、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)を活用して、地域社会総がかりで生徒指導を展開します。学校運営協議会を通じて、保護者や地域の人々等が一定の権限と責任を持って学校運営に参画する仕組みを置く学校が、コミュニティ・スクールです。

「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」(第47条の5)で、その意義や役割が規定されており、学校運営協議会の設置は教育委員会の努力義務とされています。保護者や地域の人々等の意見を学校運営に反映させるための協議や基本方針の承認を行うことを通じて、生徒指導の課題や重点目標の共通理解、具体的な教育活動の案出、家庭と地域との連携・協働、評価と改善事項等を地域と学校が共有して具体的な取組へとつなげることが可能となります。保護者や地域の人々が学校や教育委員会に意向を伝えるとともに、学校からも保護者や地域の人々に意向を伝えることが、具体的な取組を推進する上で重要です。

(2)地域学校協働活動

第二の方法として、「学校をとした地域づくり」として、コミュニティ・スクールと一体的に取り組む地域学校協働活動があります。地域学校協働活動とは、地域の高齢者・成人・学生・保護者・PTA・NPO・民間企業・団体・機関等の幅広い地域の人々等の参画を得て、地域全体で児童生徒の学びや発達を支える活動です。

地域学校協働活動は、平成29年3月の社会教育法(第5条第2項)の改正により、法律に位置付けられました。登下校の見守り、多様な教育的ニーズのある児童生徒への学習支援、放課後や土曜日等における学習プログラムの提供、職場体験の場の提供等、学校と地域が連携・協働することによって、生徒指導を地域社会全体で行うことが可能になります。

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