1.5生徒指導の取組上の留意点
1.5.1児童生徒の権利の理解
第一の留意点は、教職員の児童の権利に関する条約についての理解です。
(1)児童の権利に関する条約
児童生徒の人権の尊重という場合に、留意すべきは、平成元年11月20日に第44回国連総会において採択された児童の権利に関する条約です。日本は、平成2年にこの条約に署名し、平成6年に批准し、効力が生じています。
この場合の児童とは、18歳未満の全ての者を指します。本条約の発効を契機として、児童生徒の基本的人権に十分配慮し、一人一人を大切にした教育が行われることが求められています。生徒指導を実践する上で、児童の権利条約の四つの原則を理解しておくことが不可欠です。
四つの原則とは、第一に、児童生徒に対するいかなる差別もしないこと、第二に、児童生徒にとって最もよいことを第一に考えること、第三に、児童生徒の命や生存、発達が保障されること、第四に、児童生徒は自由に自分の意見を表明する権利を持っていることを指します。関連する条文の概要は、以下のとおりです。
① 差別の禁止
児童又はその父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する。(第2条)
② 児童の最善の利益
児童に関する全ての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。(第3条)
③ 生命・生存・発達に対する権利
生命に対する児童の固有の権利を認めるものとし、児童の生存及び発達を可能な最大限の範囲において確保する。(第6条)
④ 意見を表明する権利
児童が自由に自己の意見を表明する権利を確保する。児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮される。(第12条)
(…以下略…)
(2)こども基本法
令和4年6月に公布された「こども基本法」においては、「日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり、次代の社会を担う全てのこどもが、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、こどもの心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、こども施策を総合的に推進すること」が目的として示されています(第1条)。併せて、以下のような本法基本理念の趣旨等について、児童の権利に関する条約とともに理解しておくことが求められます。
(基本理念の主な記載)
① 全てのこどもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにすること。(第3条第1号)
② 全てのこどもについて、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され保護されること、その健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、教育基本法の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること。(第3条第2号)
③ 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。(第3条第3号)
④ 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること。(第3条第4号)
1.5.2ICTの活用 略
1.5.3幼児教育との接続
(1)幼児期の終わりまでに育ってほしい姿 略
(2)スタートカリキュラムの工夫
小学校では、幼児期における遊びを通した総合的な学びから、各教科等における、より自覚的な学びに円滑に移行できるよう、入学当初において、生活科を中心とした合科的・関連的な指導や弾力的な時間割の設定など、指導計画の作成や指導の工夫をすることが必要です。いわゆるスタートカリキュラムを編成・実施することにより、自分で考え、選択・判断し、行動する自己指導能力や他者との協働性の土台をつくることが可能になります。
1.5.4社会的自立に向けた取組 略
第2章 生徒指導と教育課程 略
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