第Ⅱ部 各論
1.幼児教育の質の向上について 略
2.9年間を見通した新時代の義務教育の在り方について
(1)基本的な考え方
○ 義務教育は,憲法や教育基本法に基づき,全ての児童生徒に対し,各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎や,国家や社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的とするものである。社会が劇的に変化し先行き不透明な時代だからこそ,人材育成の基盤である義務教育は一層重要な意義を持つものであり,我が国のどの地域で生まれ育っても,知・徳・体のバランスのとれた質の高い義務教育を受けられるようにすることが国の責務である。
○ また,児童生徒が多様化し学校が様々な課題を抱える中にあっても,義務教育において決して誰一人取り残さない,ということを徹底する必要がある。このため,一人一人の能力,適性等に応じ,その意欲を高めやりたいことを深められる教育を実現するとともに,学校を安全・安心な居場所として保障し,様々な事情を抱える多様な児童生徒が,実態として学校教育の外に置かれてしまわないように取り組むことが必要である。また,多様性を尊重する態度や互いのよさを生かして協働する力,持続可能な社会づくりに向けた態度,リーダーシップやチームワーク,感性,優しさや思いやりなどの人間性等を育むことも重要である。こうした観点からも,特別支援学校に在籍する児童生徒が居住する地域の学校に副次的な籍を置く取組を進めるなど,義務教育段階における特別支援教育のより一層の充実を図ることが重要である。
(2)教育課程の在り方
①学力の確実な定着等の資質・能力の育成に向けた方策
○ また,新学習指導要領では,児童生徒の発達の段階を考慮し,言語能力,情報活用能力,問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力を育成していくことができるよう,各教科等の特質を生かし,教科等横断的な視点から教育課程の編成を図るものとされており,その充実を図ることが必要である。(…以下略…)
○ 小学校低・中学年においては,安心して学べる居場所としての学級集団の中で,基礎的・基本的な知識及び技能を反復練習もしながら確実に定着させるとともに,知識及び技能の習得や活用の喜び,充実感を味わう活動を充実することが重要である。資質・能力を確実に習得させるためには,個々の児童の状態をより丁寧に把握し,個別的な対応を行う「指導の個別化」が重要である。
○ 特に小学校低学年においては,まず安心して学べる居場所である学級集団を確立し,教師が提示する課題を自らの学習課題として捉え,「分からないこと・できないこと」を「分かること・できること」にする過程が学習であることや, 「分からないこと・できないこと」を他者に伝えたり助けを求めたりするなど,他の児童や教師との対話が学びを深めるために存在することといった事柄を理解する「学びの自覚化」が必要である。また,語彙については児童のそれまでの学習の状況を代表的に示す面があることから,その状態を把握した上で,家庭・地域との連携も図りながら,教科等横断的な視点で教育課程を編成・実施し,意味・文脈を含めた語彙の獲得など,言語能力の育成を図る必要がある。さらに,立式における計算の意味等の理解と計算方法等の習熟,数学的な見方・考え方を働かせた日常及び数学の事象の把握といった資質・能力を伸ばすことや,中学年以降に向けて教科等の基礎となる気付きを様々な体験,読書,対話から学ぶことなども重要である。
○ また,発達の段階にかかわらず,児童生徒の実態を適切に捉え,その可能性を伸ばすことができるよう環境を整えていくことも重要である。例えば,児童生徒の学習意欲を向上する観点からは,教科等を学ぶ本質的な意義や学習状況を児童生徒に伝えること等が重要となる。また,学習内容の理解を定着する観点からは,単に問題演習を行うだけではなく,内容を他者に説明するなどの児童生徒同士の学び合いにより,児童生徒が自らの理解を確認し定着を図ることが,説明する児童生徒及びそれを聞く児童生徒の双方にとって有効であり,授業展開として重要であると考えられる。
(以下略)
(3)義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方
①小学校高学年からの教科担任制の導入
○ 義務教育の目的・目標を踏まえ,育成を目指す資質・能力を確実に育むためには,各教科等の系統性を踏まえ,学年間・学校間の接続を円滑なものとし,義務教育9年間を見通した教育課程を支える指導体制の構築が必要である。
○ 児童生徒の発達の段階を踏まえれば,児童の心身が発達し一般的に抽象的な思考力が高まり,これに対応して各教科等の学習が高度化する小学校高学年では,日常の事象や身近な事柄に基礎を置いて学習を進める小学校における学習指導の特長を生かしながら,中学校以上のより抽象的で高度な学習を見通し,系統的な指導による中学校への円滑な接続を図ることが求められる。
○ また,多様な子供一人一人の資質・能力の育成に向けた個別最適な学びを実現する観点からは,GIGA スクール構想による「1人1台端末」環境下での ICT の効果的な活用とあいまって,個々の児童生徒の学習状況を把握し,教科指導の専門性を持った教師によるきめ細かな指導を可能とする教科担任制の導入により,授業の質の向上を図り,児童一人一人の学習内容の理解度・定着度の向上と学びの高度化を図ることが重要である。
○ さらに,小学校における教科担任制の導入は,教師の持ちコマ数の軽減や授業準備の効率化により,学校教育活動の充実や教師の負担軽減に資するものである。
○ これらのことを踏まえ,小学校高学年からの教科担任制を(令和4(2022)年度を目途に)本格的に導入する必要がある。(以下略)
(4)義務教育を全ての児童生徒等に実質的に保障するための方策
①不登校児童生徒への対応
○ 不登校を減らすためには,学校が児童生徒にとって安心感,充実感が得られる活動の場となり,いじめや暴力行為,体罰等を許さず,学習指導の充実により学習内容を確実に身に付けることができるなど,児童生徒が安心して教育を受けられる魅力あるものとなることが必要である。
○ また,現に不登校となっている児童生徒に対しては,個々の状況に応じた適切な支援を行うことにより,学習環境の確保を図ることも必要である。
○ このため,スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置時間等の充実による相談体制の整備,アウトリーチ型支援の実施を含む不登校支援の中核となる教育支援センターの機能強化,不登校特例校の設置促進,公と民との連携による施設の設置・運営など教育委員会・学校と多様な教育機会を提供しているフリースクール等の民間の団体とが連携し,相互に協力・補完し合いながら不登校児童生徒に対する支援を行う取組の充実,自宅等でのICT の活用等多様な教育機会の確保など,子供たちが学校で安心して教育が受けられるよう,学校内外において,個々の状況に応じた段階的な支援策を講じるとともに,更に効果的な対策を講じるため,スクリーニングの実施による児童生徒の支援ニーズの早期把握や校内の別室における相談・指導体制の充実等の調査研究を進めていくことが必要である。
②義務教育未修了の学齢を経過した者等への対応
○ 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(教育機会確保法)第 14 条が規定するように,学齢経過者の中に義務教育の機会の提供を希望する者が多くいることを踏まえ,夜間中学については,教育のセーフティネットとして質・量共に充実していく必要がある。
○ このため,全ての都道府県に少なくとも一つの夜間中学が設置されるよう,また,人口規模や都市機能に鑑み,全ての指定都市において夜間中学が設置されるよう促進することが重要である。
(以下略)
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