4. 今後の改革の方向性
令和 3 年答申で示された理想的な教師及び教職員集団の姿を実現するためには、教師の養成・免許・採用・研修に関する制度について、今後、以下の方向性で改革を進める必要がある。
(1) 「新たな教師の学びの姿」の実現
● 子供たちの学び(授業観・学習観)とともに教師自身の学び(研修観)を転換し、「新たな教師の学びの姿」(個別最適な学び、協働的な学びの充実を通じた、「主体的・対話的で深い学び」)を実現。
● 教職大学院のみならず、養成段階を含めた教職生活を通じた学びにおいて、「理論と実践の往還」を実現する。
①. 教職生活を通じた「新たな学びの姿」の実現
高度な専門職である教師は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努める義務を負っており、学び続ける存在であることが社会からも期待されている。
既に、審議まとめでは、「新たな教師の学びの姿」として、
● 変化を前向きに受け止め、探究心を持ちつつ自律的に学ぶという「主体的な姿勢」
● 求められる知識技能が変わっていくことを意識した「継続的な学び」
● 新たな領域の専門性を身に付けるなど強みを伸ばすための、一人一人の教師の個性に即した「個別最適な学び」
● 他者との対話や振り返りの機会を確保した「協働的な学び」
を示した。
(…略…)
令和3年答申では、「一人一人の子供を主語」にし、「全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学び」の充実を通じて、「主体的・対話的で深い学び」を実現するという学校教育の目指すべき姿を示しており、子供たちの学び(授業観・学習観)の転換を目指している。
個別最適な学び、協働的な学びの充実を通じて、「主体的・対話的で深い学び」を実現することは、児童生徒の学びのみならず、教師の学びにも求められる命題である。つまり、教師の学びの姿も、子供たちの学びの相似形であるといえる。主体的に学び続ける教師の姿は、児童生徒にとっても重要なロールモデルである。「令和の日本型学校教育」を実現するためには、子供たちの学びの転換とともに、教師自身の学び(研修観)の転換を図る必要がある。
(…略…)
②. 「理論と実践の往還」の手法による授業観・学習観の転換
また、養成段階において「新たな教師(教職志望者)の学びの姿」を実現する際の視点として、「理論と実践の往還」も重要である。「理論と実践の往還」は、教職大学院において同制度導入以来の中核的な理念であるが、学部段階での養成も含め、理論と実践を往還させた省察力による学びを実現する必要がある。
その際、理論知(学問知)と実践知、研究者教員と実務家教員などの、いわゆる「二項対立」の陥穽に陥らないことに留意すべきである。「理論と実践の往還」を実現するためには、理論の実践化と実践の理論化の双方向が必要である。つまり、単に学んだ理論を学校現場で実践するのみならず、自らの実践を理論に基づき省察することが必要になってくる。研究者教員が理論を、実務家教員が実践や実習を担当し、それぞれが分断されているという構図ではなく、教師間の連携・協働により、教職課程を運営していく必要がある。
(…略…)
(2) 多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成
● 学校組織のレジリエンスを高めるために、教職員集団の多様性が必要。
● 教師一人一人の専門性を高めるとともに、民間企業等の勤務経験のある教師などを取り込むことで、教職員集団の多様性を一層向上させる。
● 学校管理職のリーダーシップの下、心理的安全性の確保、教職員の多様性を配慮したマネジメントを実施。
①. 教職員集団の多様化
学校を取り巻くあらゆる課題に対応するためには、個々の教師の資質能力の向上だけでは限界がある。学校が、直面する様々な教育課題を克服できる組織として進化するためには、組織のレジリエンスを高めることが重要であり、構成要素の一つとして、教職員集団の適度な多様性が必要である。
そのためには、教師一人一人の専門性を高めるとともに、学校組織が多様な専門性や背景を持つ人材との関わりを常に持ち続けるとともに、そうした人材を積極的に取り込んでいくことが重要である。
学校現場においては、学校との関わりの度合い(頻度や業務内容等)に応じて、社会人等多様な人材が参画している。近年では「チームとしての学校」の理念の下、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、部活動指導員、医療的ケア看護職員、情報通信技術支援員、特別支援教育支援員、教員業務支援員など、多様な人材がそれぞれの専門性を活かしたり教師を補助したりしながら児童生徒への対応や学校運営に携わっている。今後は、専門的な知識・経験を活かし、教師として勤務する民間企業等の勤務経験者が増加することで、教職員集団の多様性が一層向上されることになる。
(以下略)
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