[09/11]4.新時代の特別支援教育の在り方について

4.新時代の特別支援教育の在り方について

(1)基本的な考え方

○ 特別支援教育は,障害のある子供の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち,子供一人一人の教育的ニーズを把握し,その持てる力を高め,生活や学習上の困難を改善又は克服するため,適切な指導及び必要な支援を行うものである。
また,特別支援教育は,発達障害のある子供も含めて,障害により特別な支援を必要とする子供が在籍する全ての学校において実施されるものである。

○ 一方で,少子化により学齢期の児童生徒の数が減少する中,特別支援教育に関する理解や認識の高まり,障害のある子供の就学先決定の仕組みに関する制度の改正等により,通常の学級に在籍しながら通級による指導を受ける児童生徒が大きく増加しているなど,特別支援教育をめぐる状況が変化している。また,今般の新型コロナウイルス感染症の拡大による臨時休業により特別支援学校を始めとする学校が障害のある子供にとってのセーフティネットとしての役割を果たすなど,社会全体で特別支援教育が果たしている機能や役割等が再認識されるとともに,特別支援学校等だけでその全ての期待に応えることの難しさなど,今後の課題も明らかになりつつある。

○ また,障害者の権利に関する条約に基づくインクルーシブ教育システムの理念を構築し,特別支援教育を進展させていくために,引き続き,障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に教育を受けられる条件整備,障害のある子供の自立と社会参加を見据え,一人一人の教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できるよう,通常の学級,通級による指導,特別支援学級,特別支援学校といった,連続性のある多様な学びの場の一層の充実・整備を着実に進めていく必要がある。

(2)障害のある子供の学びの場の整備・連携強化

①就学前における早期からの相談・支援の充実 略

②障害のある子供の就学相談や学びの場の検討等の支援について

○ 障害のある子供の就学相談や学びの場の検討等の支援については,子供一人一人の教育的ニーズを踏まえた適切な教育を提供するため,極めて重要である。各市町村教育委員会における子供一人一人に応じたきめ細かい支援をより一層充実させるため,障害のある子供の就学相談や学びの場の検討等の参考となるようが作成している教育支援資料の内容を充実する必要がある。

○ その際,例えば,
・特別支援学級や通級による指導,通常の学級等の学びの場の判断について,教育支援委員会を起点に様々な関係者が多角的,客観的に検討すること
・必要に応じ,都道府県教育委員会や特別支援学校が市区町村教育委員会等の求めに応じた助言等を行うこと
・特別支援学級及び通級による指導の対象となる児童生徒の障害の状態等をより具体的な形で分かりやすく示すとともに,障害の状態等を参考に特別の教育課程を検討する際の視点を解説すること
・教育委員会が示す就学先と保護者の意向が合致しない場合の調整の場の在り方について検討すること
・特別支援学級において指導を受ける時間が一定の時間に満たない者について通級による指導の対象とすることを検討することもありうること
等を示すことが考えられる。
(以下略)

(3)特別支援教育を担う教師の専門性向上

①全ての教師に求められる特別支援教育に関する専門性

○ 全ての教師には,障害の特性等に関する理解と指導方法を工夫できる力や,個別の教育支援計画・個別の指導計画などの特別支援教育に関する基礎的な知識,合理的配慮に対する理解等が必要である。加えて, 障害のある人や子供との触れ合いを通して,障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は障害により起因するものだけでなく,社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものという考え方,いわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえ,障害による学習上又は生活上の困難について本人の立場に立って捉え,それに対する必要な支援の内容を一緒に考えていくような経験や態度の育成が求められる。また,こうした経験や態度を,多様な教育的ニーズのある子供がいることを前提とした学級経営・授業づくりに生かしていくことが必要である。

○ また,目の前の子供の障害の状態等により,障害による学習上又は生活上の困難さが異なることを理解し,個に応じた分かりやすい指導内容や指導方法の工夫を検討し,子供が意欲的に課題に取り組めるようにすることが重要である。その際,困難さに対する配慮等が明確にならない場合などは,専門的な助言又は援助を要請したりするなどして,主体的に問題を解決していくことができる資質や能力が求められる。

②特別支援学級, 通級による指導を担当する教師に求められる特別支援教育に関する専門性

○ 特別支援学級や通級による指導の担当教師には,通常の教育課程に係る専門性を基盤として,実際に指導に当たる上で必要な,特別な教育課程の編成方法や,個別の教育支援計画と個別の指導計画の作成方法,障害の特性等に応じた指導方法,自立活動を実践する力,障害のある児童生徒の保護者支援の方法,関係者間との連携の方法等に関する専門性の習得が求められる。

○ 特に,児童生徒の実態に応じて教育課程が異なる場合のある特別支援学級では,各教科等での目標が異なる児童生徒を同時に指導する実践力が求められる。

③特別支援学校の教師に求められる専門性

○ 多様な実態の子供の指導を行うため,特別支援学校の教師には,障害の状態や特性及び心身の発達の段階等を十分把握して,これを各教科等や自立活動の指導等に反映できる幅広い知識・技能の習得や,学校内外の専門家等とも連携しながら専門的な知見を活用して指導に当たる能力が必要である。

○ また,障害のある子供の一定数が複数の障害を重複していることを踏まえた対応が必要である。例えば,障害者権利条約第 24 条において示されている通り,盲ろうの障害に関し,最も適切な教育が行われるべきことが求められているが,実際に盲ろうの障害を有する子供は,情報の入力や出力の観点から補完関係にある視覚と聴覚の両方に障害があるため,盲ろうの障害の独自性に合わせた指導事例の収集や,指導や支援のポイントの整理等を進めるなど,専門性の高い教師の育成を支えていく必要がある。

(4)関係機関の連携強化による切れ目ない支援の充実

○ 特別支援教育を受けてきた子供の指導や合理的配慮の状況等を,個別の教育支援計画等を活用し,学校間で適切に引き継ぎ,各学校における障害に配慮した適切な指導につなげることが重要である。その際,個別の指導計画との趣旨の違いに留意しながら,共通して引き継がれるべき事項をより明確にするとともに,統合型校務支援システムの活用を図るなど教育のデジタル化の動向も踏まえた環境整備を行うことが必要である。

○ 特に,医療的ケアが必要な子供への対応については,安心して学校で学ぶことができるよう,また,その保護者にも安全・安心への理解が得られるよう,学校長の管理下において,担任,養護教諭,関係する医師,看護師などがチームを編成し,一丸となって学校における医療的ケアの実施体制を構築していくことが重要である。(以下略)

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