キャリア教育の歴史をまとめる。
キャリア教育登場〜早いうちからやりましょう〜
情報化・グローバル化の流れの中、社会人として自立した人間を育てる観点から、1999年、中央教育審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」の中で、はじめて「キャリア教育」の必要性が言及された。
答申の中で、
1.小学校段階から発達段階に応じて実施すること
2.家庭や地域と連携して体験的な学習を重視すること
3.教育課程に位置付けて計画的に行うこと
など今後のキャリア教育についての改善点が示された。
特に1.の早い段階からキャリア教育を行う必要を示した点に注目したい。キャリア教育は高校生から、というようなものではないのである。
「4領域8能力の例」が広まったはいいものの…
2004年、文部科学省は「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書 〜児童生徒一人一人の勤労観、職業観を育てるために〜」の中で、「職業観・勤労観を育む学習プログラムの枠組み(例)」をキャリア教育推進計画の一例として紹介した。
「職業観・勤労観を育む学習プログラムの枠組み(例)」はキャリア教育で必要な力を人間関係形成能力、情報活用能力、将来設計能力、意思決定能力の4つの領域にまとめ、さらにそれぞれの領域を2つずつの能力で示した「4領域8能力の例」として有名なものである。
文科省としては、上の例を参考に各学校ごとに特色のあるキャリア教育を進めてもらおうという意図であったが、現場では「文科省から出てるものだからこれをコピーして使えばOK」と、日本中の学校でほとんど同じキャリア教育計画が大量生産される結果につながった。
また、シートには高等学校までのことしか書かれてないため、生涯を通じて育成される能力という観点が薄い点も課題となった。
「基礎的・汎用的能力」の育成へ
上記の課題を克服するため、中央教育審議会が改めて分析を加えて2011年「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育のあり方について(答申)」を答申した。ここで「分野や職種にかかわらず、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力」として示されたのが「基礎的・汎用的能力」である。「基礎的・汎用的能力」は、「人間関係形成・社会形成能力」、「自己理解・自己管理能力」、「課題対応能力」、「キャリアプランニング能力」の4つの能力によって構成される。
キャリア教育関係の重要用語
ここでは、キャリア教育に関する用語をいくつか確認する。引用元はすべて、先述の答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育のあり方について(答申)」である。
- キャリア教育の定義
「キャリア教育」とは、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す」教育である。 - キャリアとは
人が,生涯の中で様々な役割を果たす過程で,自らの役割の価値や自分と役割との関係を見いだしていく連なりや積み重ねが,「キャリア」の意味するところである。 - キャリア発達とは
社会の中で自分の役割を果たしながら,自分らしい生き方を実現していく過程を「キャリア発達」という。
では演習!
演習問題
次の文は「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(平成23年1月 中央教育審議会)におけるキャリア教育に関する記述である。これらの正誤判定をせよ。
(1) キャリア教育で育成する力を「一定又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度」であるとしている。
(2) キャリア教育の推進について、「キャリアが子ども・若者の発達の段階やその発達課題の達成と深く関わりながら段階を追って発達していくことを踏まえ、幼児期の教育から高等教育に至るまで体系的に進めることが必要である」としている。
解説
今回は以上!
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