[05/11]4.「令和の日本型学校教育」の構築に向けた今後の方向性

4.「令和の日本型学校教育」の構築に向けた今後の方向性

○ 家庭の経済状況や地域差,本人の特性等にかかわらず,全ての子供たちの知・徳・体を一体的に育むため,これまで日本型学校教育が果たしてきた,①学習機会と学力の保障,②社会の形成者としての全人的な発達・成長の保障,③安全・安心な居場所・セーフティネットとしての身体的,精神的な健康の保障,という3つの保障を学校教育の本質的な役割として重視し,これを継承していくことが必要である。

○ その上で,「令和の日本型学校教育」を,社会構造の変化や感染症・災害等をも乗り越えて発展するものとし,「全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学び」を実現するためには,今後,以下の方向性で改革を進める必要がある。

○ また,学校だけではなく地域住民等と連携・協働し,学校と地域が相互にパートナーとして,一体となって子供たちの成長を支えていくことが必要である。その際,コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)と地域学校協働活動を一体的に実施することが重要である。

○ さらに,一斉授業か個別学習か,履修主義か修得主義か,デジタルかアナログか,遠隔・オンラインか対面・オフラインかといった,いわゆる「二項対立」の陥穽に陥らないことに留意すべきである。どちらかだけを選ぶのではなく,教育の質の向上のために,発達の段階や学習場面等により,どちらの良さも適切に組み合わせて生かしていくという考え方に立つべきである。

(1)学校教育の質と多様性,包摂性を高め,教育の機会均等を実現する 略

(2)連携・分担による学校マネジメントを実現する 略

(3)これまでの実践と ICT との最適な組合せを実現する

○ 令和時代における学校の「スタンダード」として,「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善に資するよう,GIGA スクール構想により児童生徒1人1台端末環境と高速大容量の通信ネットワーク環境が実現されることを最大限生かし,端末を日常的に活用するとともに,教師が対面指導と家庭や地域社会と連携した遠隔・オンライン教育とを使いこなす(ハイブリッド化)など,これまでの実践と ICT とを最適に組み合わせることで,学校教育における様々な課題を解決し,教育の質の向上につなげていくことが必要である。

○ なお,ICT はこれからの学校教育に必要不可欠なものであり,基盤的なツールとして最大限活用していく必要があるが,その活用自体が目的でないことに留意が必要である。

(4)履修主義・修得主義等を適切に組み合わせる

○ 現行の日本の学校教育制度では,所定の教育課程を一定年限の間に履修することでもって足りるとする履修主義,履修した内容に照らして一定の学習の実現状況が期待される修得主義,進学・卒業要件として一定年限の在学を要する年齢主義,進学・卒業要件として一定の課程の修了を要求する課程主義の考え方がそれぞれ取り入れられている。

○ 修得主義や課程主義は,一定の期間における個々人の学習の状況や成果を問い,それぞれの学習状況に応じた学習内容を提供するという性格を有する。個人の学習状況に着目するため,個に応じた指導,能力別・異年齢編成に対する寛容さという特徴が指摘される一方で,個別での学習が強調された場合,多様な他者との協働を通した社会性の涵養など集団としての教育の在り方が問われる面は少なくなる。

○ 一方で,履修主義や年齢主義は,対象とする集団に対して,ある一定の期間をかけて共通に教育を行う性格を有する。このため修得主義や課程主義のように学習の速度は問われず,ある一定の期間の中で,個々人の成長に必要な時間のかかり方を多様に許容し包含する側面がある一方で,過度の同調性や画一性をもたらすことについての指摘もある。

○ 我が国においては現在,制度上は原級留置が想定されているものの,運用としては基本的に年齢主義が採られている。進級や卒業の要件としての課程主義を徹底し,義務教育段階から原級留置を行うことは,児童生徒への負の影響が大きいことや保護者等の関係者の理解が得られないことから受け入れられにくいと考えられる。

○ 全ての児童生徒への基礎・基本の確実な定着への要請が強い義務教育段階においては,進級や卒業の要件としては年齢主義を基本に置きつつも,教育課程を履修したと判断するための基準については,履修主義と修得主義の考え方を適切に組み合わせ,それぞれの長所を取り入れる教育課程の在り方を目指すべきである。高等学校においては,これまでも履修の成果を確認して単位の修得を認定する制度が採られ,また原級留置の運用もなされており,修得主義・課程主義の要素がより多く取り入れられていることから,このような高等学校教育の特質を踏まえて教育課程の在り方を検討していく必要がある。

(5)感染症や災害の発生等を乗り越えて学びを保障する 略

(6)社会構造の変化の中で,持続的で魅力ある学校教育を実現する 略

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