ヴントから始まり、行動主義心理学、ゲシュタルト心理学、そして精神分析学と分化していく心理学の歴史のはじまりをみていく。
ヴント(1832-1920,ドイツ)の内観法
心理学の世界で最初に名前があがるのがヴント。ヴントに関しては「内観法」および「構成主義」というキーワードを押さえておきたい。内観法とは、被験者自身に被験者の「こころ」を観察して話させるという手法のことであり、やや被験者の感覚に頼ってしまう方法とも言える(自分自身で何に悩んでいるのか意識化できない場合などもあるだろう)。また、ヴントは外部からの刺激を細かく分類し、それに対する反応の組合せで心理をさぐろうとした。このような細かい要素を集めてこころを分析しようとする立場を構成主義心理学という。
ヴントは心理学の世界を切り開いたという点では大きな業績があると言えるが、同時にその手法に関していくつかの課題も残した。例えば「内観法」では、被験者の感覚に頼りすぎて客観性に欠けることがあり、その改善が求められた(これが行動主義心理学につながる)。また「構成主義」があまりに細かい要素を寄せ集める方法であったため、人のこころを分析・理解するにはもう少し全体的な立場で見る必要があるのではないか、という批判がおこったのである(これがゲシュタルト心理学につながる)。
ワトソン(1878-1958,アメリカ)の行動主義心理学
内観法などでは、被験者の主観・思い込みなどが紛れ込んでしまい、客観的に「こころ」を観察するのは難しい。そこで、「こころ」を直接観察するのではなく、客観的に観察可能な「行動」に注目を当てたのが「行動主義心理学」。彼は1913年に「行動主義宣言」まで行っている。複雑できちんと把握することが難しい「こころ」のことは置いておき、どのような刺激を与えるとどんな反応=行動をするのかという客観的事実を元に学問を展開しようとしたのだ。しかし、人間の内的な思考過程を軽視する姿勢により、「こころ」を忘れた心理学と批判されることも。
ウェルトハイマー(1880-1943,ドイツ)のゲシュタルト心理学
ヴントの構成主義心理学あるいはワトソンの行動主義心理学は「刺激と反応」のデータを寄せ集めることによって人間を理解しようとするものであるが、それに対しゲシュタルト心理学では、全体性を重視すべきだと考える。人間の複雑な行動やこころは要素に分解できるものではないというわけだ。全体性の重要さを理解する現象として、仮現運動と呼ばれるものがある。暗闇の中で2点A,Bを交互に適切なスピードで光の点滅をさせると、光がA,B間を動いているように感じる現象のことである。各点ごとに見ればただの点滅に過ぎないけれども、全体(=2点)を同時に捉えるからこそ動きを感じることができているというわけである。
フロイト(1856-1939, オーストリア)の精神分析学
フロイトは無意識の存在に注目した精神分析学を提唱した。フロイトは、自分でも意識化することのできな心の領域である「無意識」によって、精神病理が引き起こされていると考え、それらを意識化することで精神病理を治そうと考えた。また、このような無意識に貯えられるエネルギーは人生の初期の経験に基づくものである、とも。
では演習。
演習問題
次の文の( )に適する語句を、次の選択肢の中からそれぞれ選べ。
(1) ( )は、行動主義を提唱し、観察可能な行動を科学的に予測し統制することが心理学の目的であるとし、客観的に観察できない心の状態による解釈を容認しなかった。行動の単位を刺激と反応の結合からなると考え、環境条件を整え条件づけを駆使すれば、意図的に理想の人間を育てることができると主張し、外部からの批判に遭った。
(2) ( )は、心理学の体系化を試み、心理学の対象を、われわれが直接に経験する意識内容であるとして、その研究には、内観法を用いるべきだと主張した。
(3) ゲシュタルト心理学は、仮現運動の実験を行った( )によって創始された。
(4) ( )を祖にした精神分析学では、人間の意識には隠されている強い心理的過程が存在し、ヒステリーは患者の無意識の中に潜んでいる感情のもつれを解きほぐすこと以外に治療法はないと考えるようになり、無意識の世界を探求する方法として夢の内容を分析することや自由連想法が考案された。
【選択肢】ヴント、ワトソン、ウェルトハイマー、フロイト
解説
aaaaa
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