【解説040】教員の服務、職務上の義務が3つと身分上の義務が5つ

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服務関係はどの自治体でも頻出事項である。面接試験でも聞かれる可能性があるし、何より現場入りして必ず必要な知識になるので確実に頭に入れておきたい。

服務とは、公務員がその勤務に服するにあたっての義務や制限のことで、大きく「職務上の義務」と「身分上の義務」の2つに分けることができる。

「職務上の義務」は以下の3条文で定められているもの。

(地方公務員法第31条 服務の宣誓)

職員は、条例の定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。

(地方公務員法第32条 法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)

職員は、その職務を遂行するに当つて、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。

(地方公務員法第35条 職務に専念する義務)

職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、 その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。

「職務上の義務」それぞれ表にまとめると以下の通り。

職務上の義務
種類 内容・補足
服務の宣誓  
法令及び上司の職務上の命令に従う義務 職務上の命令は口頭でも有効
職務に専念する義務 法律又は条例で特別に免除の場合もある

服務の宣誓ってのはこれからちゃんと仕事やるぞ〜という宣言。職務上の命令ってのは強い言い方ですが、上から振られた仕事はちゃんとやれということ、それから職務に専念する義務ってのも要は勤務時間はちゃんと仕事しろってこと。どれも、要するに「ちゃんと仕事やれ」ということで、この3つを「職務上の義務」と言っているわけです。受験生はパッと頭から出せることが大事。



続いて身分上の義務。これは勤務時間以外のプライベートの時間ことにも及ぶ。

(地方公務員法第33条 信用失墜行為の禁止)

職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

(地方公務員法第34条1 秘密を守る義務)

職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。

(教育公務員特例法第18条1 公立学校の教育公務員の政治的行為の制限)

公立学校の教育公務員の政治的行為の制限については、当分の間、地方公務員法第三十六条の規定にかかわらず、国家公務員の例による。

(国家公務員法第102条 政治的行為の制限)

職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らかの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。

2 職員は、公職による公職の候補者となることができない。

3 職員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問、その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。

(地方公務員法第37条1 争議行為等の禁止)

職員は、地方公共団体の機関が代表する使用者としての住民に対して、同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は地方公共団体の機関の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、またはその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。

(地方公務員法第38条1 営利企業への従事等の制限)

職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を受けていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。

(教育公務員特例法第17条1 兼職及び他の事業等の従事)

教育公務員は、教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者において認める場合には、給与を受け、又は受けないで、その職を兼ね、又はその事業若しくは事務に従事することができる。

「身分上の義務」5つをまとめると以下の通り。

身分上の義務
種類 内容・補足
信用失墜行為の禁止  
秘密を守る義務 職を退いた後も同様。法令上による証人や鑑定人で職務上の秘密を発表する場合も任命権者の許可が必要。
政治的行為の制限 教育公務員特例法で、国家公務員の例によるとされている。団体の役員になったり、勧誘活動をするのはダメ。
争議行為等の禁止  
営利企業への従事等の制限 本務に支障がないと任命権者が認める場合には可能

争議行為はストライキのこと。
また、政治的行為の制限については、通常の地方公務員であれば所属する自治体の区域外の政治的活動がOKであるのに対して教育公務員は全国どこでもダメということで、”国家公務員”並みの制限ということになっている。(なお、細かい知識だが、政治的行為の制限に違反する場合には、国家公務員の場合には罰則規定が定められているが、それを教育公務員にもそのまま適用するわけではない、とされている。)

(公立学校の教育公務員の政治的行為の制限)
第十八条 公立学校の教育公務員の政治的行為の制限については、当分の間、地方公務員法第三十六条の規定にかかわらず、国家公務員の例による。
2 前項の規定は、政治的行為の制限に違反した者の処罰につき国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百十条第一項の例による趣旨を含むものと解してはならない。

繰り返しになるが、職務上の3つ、身分上の5つは教員生活の中でずっと守るものである。確実におさえておこう。



では演習。6問。
(演習) 次の文の正誤判定をせよ。
(1) 地方公務員法に規定されている、信用失墜行為の禁止や秘密を守る義務などは、いずれも職務を遂行するに当たって守るべき職務上の義務にあたる。
→(誤)名称の雰囲気が似ているが、「職務上の義務3つ」と「身分上の義務5つ」を分けて覚えよう。信用失墜行為の禁止や秘密を守る義務は勤務時間以外のことも含む「身分上の義務」となりる。なお東京都の2007年で図を使ってこんな感じで出題されている↓

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ちなみに、上図の正解は1。上の表は覚えやすいので活用するとよいだろう。

では次。

(2) 職員は、勤務時間外であれば、任命権者の許可を要することなく営利を目的とする私企業を営んだり、 報酬を得て事務に従事したりすることができる。

→(誤)身分上の義務で儲ける行為はダメ。同様の誤りの文は何度も出題されている。

(3) 職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならないが、法令による証人、鑑定人等となる場合は、任命権者の許可の有無にかかわりなく、職務上の秘密に属する事項を発表しなければならない。

→(誤)おそらく99.9パーセント以上の教員には関係ない話だろうが、「証人」「鑑定人」になるようなことがあった場合でも、職務上の秘密を発表する場合は任命権者の許可が必要。また、退職した後も秘密を守る義務があるということを押さえておこう。



(4) 職員は、勤務条件の維持改善を図ることを目的として、職員団体を結成し、又はこれに加入することが でき、争議行為をすることが認められている。
→(誤)労働組合を結成したり、加入したりすることは可能だが、争議行為(ストライキ)は認められていない。

(5) 職員が、勤務時間中にインターネットで職務と関係の無い個人的な目的のために調べ物をすることは、 職務専念義務に違反するので、分限処分の対象となる。
→(誤)職務専念義務があるので、「懲戒処分」の対象になる。「分限処分」は本人の責任が問われない処分である。

(6) 教育公務員は、所属する地方公共団体の区域外において地域政党の役員となることはできるが、当該地方公共団体の公の選挙において投票するよう勧誘運動をすることはできない。

→(誤)区域外でも役員になるなどの政治活動はダメです。

今回は以上。お疲れ様でした。

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