今回は教育基本法の中でも目的・目標などの理念系の条文を4つ扱います。穴埋めになることが多いでしょう。
我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。
我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。
ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。
重要そうなワードがたくさんあります。
教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
教育の目的は一言で言えば「人格の完成」のためなのですね。なお、「人格の完成」は教育基本法にしかない用語です。「国家及び社会の形成者」は次以降の条文でも(そのまま、あるいは似たような形で)繰り返し登場します。
教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
目的の達成のためにどうすればいいのかをもう少し具体化し、5つにまとめたのが2条、教育の目標です。丸暗記は難しいでしょうが、特徴的なワードは押さえておきましょう。 「社会の形成」は1条とほぼ同じですね。
国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。
これからの世の中は変化が激しいので学校を出ても勉強をする必要があります。そこで、いつでもどこでも勉強できるような体制をつくろうと言っています。
すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
これは憲法第14条第1項の法の下の平等についての条文を教育版に焼き直したものですが、「人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって」のうちの「経済的地位」という表現は憲法にはない表現です。経済的地位が教育格差に繋がってはならないという意図が読み取れます。
2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。
1条の「国家及び社会の形成者」がここでも登場です。なお、4項の義務教育の授業料不徴収の対象は「国又は地方公共団体の設置する学校」ということで、私立学校は含まれていないことに注意してください。
では演習をいくつか。
(演習)
5問扱います。
(演習1)
次の記述は、教育基本法の条文からの抜粋である。空欄[ ア ]〜[ ウ ]に当てはまるものを選択肢から選びなさい。(2015年実施46)
第1条 教育は、[ ア ]を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない。
第5条
2 義務教育として行われる[ イ ]は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自律的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる[ ウ ]を養うことを目的として行われるものとする。
【アの選択肢】知識の習得、人格の完成
【イの選択肢】学校教育、普通教育
【ウの選択肢】基本的な資質、健やかな身体
(解)[ア]人格の完成 [イ]普通教育 [ウ]基本的な資質
(演習2)
教育基本法の条文の抜粋として適当ではないものを、次の①〜③のうちから一つ選びなさい。(2016年実施47,2010年実施46)
①教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
②国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。
③国、地方公共団体又は学校法人が設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。
(解) ③
「学校法人が設置する学校」=私立学校は授業料の不徴収のt対象外です。
では続いて2条(教育の目標)に関する問題です。
(演習3)
教育の目標を規定した教育基本法第2条の抜粋として適当ではないものを、次の①〜⑤のうちから一つ選びなさい。(2012年実施46)
①個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
②人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期する態度を養うこと。
③幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操を道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
④正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
⑤伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
(解)②
②は1条(教育の目的)の内容です。ちょっと難しかったかもしれませんね。
続いて2条(教育の目標)の穴埋め問題です。
(演習4)
次の記述は、教育基本法の条文からの抜粋である。空欄[ ア ]〜[ エ ]に当てはまるものを選択肢から選べ。(2017年実施46)
第2条 教育は、その目的を実現するため、[ ア ]を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
― 幅広い知識と教養を身に付け、[ イ ]態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二 [ ウ ]を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自立の精神を養うとともに、[ エ ]との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
【アの選択肢】学問の自由、伝統と文化
【イの選択肢】主体的に学ぶ、真理を求める
【ウの選択肢】公共の精神、個人の価値
【エの選択肢】職業及び生活、生産及び消費
(解)[ア]学問の自由 [イ]真理を求める [ウ]個人の価値 [エ]職業及び生活
最後に、第1条、4条の穴埋めです。
(演習5)
次の記述は、教育基本法の条文からの抜粋である。空欄[ア]〜[エ]に当てはまるものを選択肢から選べ。
第一条 教育は、人格の完成を目指し、[ア]で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない。
第四条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、[イ]的身分、[ウ]的地位又は門地によって、教育上差別されない。
【選択肢】平和、安全、経済、社会
(解)[ア]平和 [イ]社会 [ウ]経済的地位
[イ]は[ウ]に「経済」的地位が入ることを知っていれば埋めることができます。今回はここまでです。