【易しめ解説35】防衛機制(適応機制)の12パターン

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欲求不満や葛藤、不安を抱えたときに、どのように対処するかを防衛機制といいます。防衛機制は多くの自治体で頻出分野ですのでしっかりおさえておきたいところです。

防衛機制の用語は文献によって少し揺らぎがあるのですが、ここでは神奈川教採の過去の出題実績に合わせる形で、12パターンを整理をします。

①合理化

合理化は、理屈をつけて正当化することです。自己の不満や矛盾について、自我を傷つけないような受け入れやすい理由によって理屈付けを行います。

②投射(投影)

投射は、自分の中の認めたくない感情を他人が持っていると認知する機制です。例えば(自分が嫌いなだけなのに)「あの人は私のことを嫌っている」など。

③同一視(同一化、行動の場合は取り入れとも)

同一視は、自分の理想としている他者の価値観や態度を取り入れ同化しようとすることです。行動の場合には取り入れともいいます。例えば「流行しているアイドルのファッションを真似る」など。

④抑圧

抑圧は、自分が経験した不快な体験や認めがたい観念などを、無意識の世界に追いやることです。

⑤〜⑧は現在うまくいってないのでちょっと目標や対象を変えてしまう類の機制です。



⑤補償

補償は、ある面での自己の不満を他の面で努力してカバーすることです。もともと目指していたこととは関係のないことでカバーするわけですね。例えば「スポーツが苦手だが勉強を頑張る」など。

⑥代償

代償は、ある目標を達成しようという欲求が叶えられないとき、その欲求が向けられている対象と類似した別の対象に置き換えることで欲求不満の解消をすることです。もともと目指していたことと似たことでカバーするわけですね。例えば「旅行に行きたいがお金がないので、ネット上の写真などを見て満足しようとする」など。

⑦置き換え

欲求不満を生じさせている対象を別の対象に移し替えること。例えば「上司に対する不満を部下にぶつける」などの八つ当たりがこれにあたります。

⑧転移

特定の人へ向かう欲求や感情を、よく似た人へ向けることです。例えば「父親が嫌いな女子中学生が同年代の男性教師のことを嫌いになる」など。

12個のうち唯一いいんじゃね?と思える機制が次の昇華です。

⑨昇華

昇華は、社会的によろしくない欲求を社会的、文化的に価値の高い目的に向けられて努力することです。例えば「愛児を捨てた親が心の傷を児童教育書に託し思想家となる」など。

10反動形成

反動形成は、自己にある弱点に対する批判を避けるために正反対の行動や態度をとることです。例えば「好きなのに意地悪な態度をする」など。



11退行

退行は解決することが困難な状況で、より未発達な段階の適応をすることによって安易な解決を図ることです。例えば赤ちゃんがえりなど。

12逃避

逃避は、その文字通り現実の困難な状況から逃げる消極的な機制のことです。

(演習)

5問解いてみましょう。

(演習1)

次のア〜エの記述は、適応機制(防衛機制)について述べたものである。正しいものを2つ選びなさい。(2016年実施42)
ア「置き換え」とは、他人の優れた行動や特性などを取り入れて、自分も同一になろうと思うことである。
イ「退行」とは、現在の生活よりも未熟な発達段階に後戻りすることである。
ウ「合理化」とは、自分の失敗や過ちなどを認めず、他人に責任を押しつけたり、もっともらしい言い訳をして、心が傷つくことから自分を守ろうとしたりすることである。
エ「逃避」とは、欲求不満を生じさせている対象への感情を別の対象に移しかえることである。

(解)正しいのは(イ)と(ウ)

(ア)→置き換えではなく、同一化(取り入れ)の説明です。

(エ)→逃避でなく、置き換え。この説明だと転移でもいいかもしれません。



(演習2)

適応機制(防衛機制)の合理化についての具体的な記述として最も適切なものを、次の①〜⑤のうちから選びなさない。(2015年実施39)
①病気のため長期休職したものが職場に復帰した時、病人扱いされたくないという気持ちから猛烈に仕事をする。
②自分の尊敬する先輩の動作や言葉づかいなどを真似て、自分も同列の者だと考える。
③病気になると急に子どものようになって、医療スタッフに面倒をかけるようになる。
④学業成績の不振を自分の努力不足の結果と認めないで、遺伝によるものだとする。
⑤試験への準備が間に合わないので、試験に欠席する。

(解)④

④は成績が悪いことに(自分のことを棚に上げて)理屈付けをしていますから、合理化の説明となります。

①は復帰して頑張っているだけ?特に名称はつかないと思います。

②は同一化、③は退行、⑤は逃避です。

(演習3)

次の記述は、適応機制について述べたものである。 (1)〜(4)の例が表す機制の用語をそれぞれ選択肢から選べ。(2014年実施41)
(1) 試合でよい成績が出なかったことを天気や会場のせいにするなど、本当の原因は自分にあるにもかかわらず、もっともらしい理由で自分を正当化すること。
(2) 親への反発や怒りを直接親にぶつけることができないため、担任にその怒りをぶつけようとすること。
(3) 夏休みにアメリカに旅行に行きたいが、行けないため、写真集を買うなどして本来の欲求の充足ではなく、それにかわるもので補うこと。
(4) ある人への怒りがあるはずなのに、全く何も感じていないように振る舞い、欲求や感情を無意識に押し込めること。
【選択肢】合理化、代償、投射、抑圧、補償、同一視、転移

(解)(1)合理化 (2)転移 (3)代償 (4) 抑圧

(2)はもし選択肢に置き換えがあれば、置き換えでも正解になると思います。

(3)は旅行の代わりにそれと”似た”手段である写真集を買うということですから代償です。旅行と関係ないことで埋め合わせをする場合は補償となります。

(演習4)

次の文は、「防衛機制(適応機制)」について述べたものである。(ア)〜(エ)の状態を表す語句として正しいものを、選択肢から選べ。(2008年実施11)
(ア) 不安をもたらすおそれのある欲求や感情を自ら否定し、無意識の中に押し込めてしまう。
(イ) 自分のもっている欲求や感情を自分のものとして受容することができず、無意識のうちに他人に転嫁して他人の責任としてしまう。
(ウ) 自分のとった行動を正当化するために、もっともらしい理由づけをする。
(エ) 欲求や感情がそのまま行動にあらわれると、社会的に非難されたり受容を拒否されたりするおそれがある場合、その欲求を抑圧して、それと正反対の行動をとる。
【選択肢】逃避、昇華、同一化、置き換え、投射、分離、知性化、反動形成、抑圧、退行、補償、白日夢

(解)(ア)抑圧 (イ)投射 (ウ)合理化 (エ)反動形成

では最後に最新の問題から。

(演習5) 次のア〜エの記述は、適応規制(防衛機制)について述べたものである。ア〜エに該当する適応規制(防衛機制)の名称を選択肢から選べ。(2018年実施38)

ア 承認したくない欲求や行為に適当な理由を付けて正当化すること。

イ 自己の欲求、感情等を他人のうちにあるものとみること。

ウ 自分の弱点を克服するよりも他の特徴を伸ばすことで、心理的な安定を図ろうとすること。

エ 社会的に容認されない欲求を、社会的に承認される他の形に置き換えること。

【選択肢】補償、投射(投影)、昇華、合理化

(解)[ア]合理化 [イ]投射(投影) [ウ]補償 [エ]昇華

今回はここまでです。

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