西洋教育史分野で覚えるべき人物は12人。
今回はそれらのうち1800年以前に活躍した4人の整理です。
近代教育史のはじまりのひと
まず、これを読んでいるみなさん!
カリキュラム、学年、一斉授業など、現代にもつながる学校の基礎を作ったのは誰か知っていますか?
…答えはコメニウス(1592-1670,チェコ)です。それまでの”学校”というのは教える内容が特に定まっているわけではなく、年齢もバラバラの人たちが集まっていることが普通でした。
しかし、コメニウスはその著書『大教授学』の中で7歳〜12歳までは国語学校、13歳〜18歳まではラテン学校、19歳から24歳まではアカデミア(大学)というように、現代にもつながる年齢別・単線型の学校制度を構想したのです。コメニウスは、これからの教育制度は体型的にこうすべきだ!と初めて言い始めた人なのです。
また、コメニウスは直観教授の人としても有名です。文字がズラーっと並んでいるものだと読む気がしませんよね(この記事もそうかもしれませんが)。
コメニウスのもう一つの著書『世界図絵』は世界初の絵入り教科書といわれます。文字による説明とともに、絵が書かれてあり、コメニウスの教育思想である”直観”を重視した構成となっています。
学校制度しかり、教科書内の絵だったり、今でいうと当たり前じゃんと感じることですが、その「当たり前」を作った人ということにわけですね。教採受験者はコメニウスにはリスペクトしましょう!
ごちゃごちゃ話してしまいましたが、まとめます。コメニウスは以下の2冊の著書を覚えておけば大丈夫でしょう。
『大教授学』、『世界図絵』
ガンガン教えるロック、子どもの力を信用するルソー
もうすこし時代が下ると、ロック(1632-1704,イギリス)とルソー(1712-1778,フランス)が出てきます。細かいことを除けば、ロックとルソーの教育思想は対照的です。
子どもへの向き合い方として、
「子どもは何も知らないのだからいろんなことを教えなければダメだ」
という考え、また、
「子どもの持っている力を引き出していくことが大事だ」
という考えがあると思います。大人主体か、子ども主体かということですね。前者に相当するのがロック、後者がルソーということになります。
ロックは、その著書『教育論』の中で、子どもは何の観念ももたない白紙のような状態(タブラ・ラサ)であるから、子どもに対しても積極的な教育をすすめています。
一方のルソーは、著書『エミール』の中で、「万物は創造主の手を離れるときは、すべてが善いものであるが、人間の手にかかると、それらがみな例外なく悪いものになっていく」というように、子どもの性善説にたった消極教育をすすめています。『エミール』内には、子どもは大人を単に小さくしたものではなく、子どもそのものとして扱わなければならないという「子どもの発見」についての説明もあります。
ロックとルソーは以下のキーワードを知っておけば十分です。
『教育論』
『エミール』、消極教育、子どもの発見
公教育のコンドルセ
あとコンドルセについてかいておきます。
コンドルセ(1743-1794,フランス)は公教育の普及に力を注いだ人。面白いことに、彼は数学者でもあるんですよ。
…話をもどすと、彼は「公教育の全般的組織に関する報告及び法案」(コンドルセ案)をまとめ、誰にでも教育が無償で受けられるような仕組みを作ろうとしました。教採対策としては、公教育の普及に努めた人、と覚えておけば十分でしょう。
公教育の普及
(1) [ ア ]はチェコの宗教家、教育学者として知られている。ポーランドのリッサにわたり、古くからあるモラヴィア系のギムナジウムの再編成を手がけ、教壇に立ち校長にもなった。新しい学校のための有効な教育法を打ち立て普及することを願って、「語学入門」「大教授学」などの著作に着手した。
(2) イギリスのリントンに生まれ、父親は清教徒に属する有能な弁護士であった。[ イ ]の政治思想は、人間の自由と平等、自然権の思想を基調とする政治論であり、アメリカ独立革命期の独立宣言その他に採用されている。また、「寛容書簡」「教育論」などの著書がある。
(3) [ ウ ]の著書には、自由な国家を体系的に論じた「社会契約論」や理想的な社会に生きる子どもの教育を述べた「エミール」などがある。「エミール」には、歴史、社会、政治制度に関する諸著作を通じて描き出そうとした理想的な社会に生き、それを将来に向けて実現していく人間の育成と方法論が提示されている。
(4) [ オ ]はニュー・イングランドの小さな町バーリントンに生まれた。コロンビア大学の哲学教授となり、最初に手がけた労作は「倫理学」であり、その後、「思考の方法」を発表している。その中で、教師の任務は子どもに反省的思考の能力を付与することにあり、反省的思考力を5つの段階に分けた。後継者のキルパトリックはそれをアメリカにおける「問題解決法の発見」と評した。
【選択肢】ロック、ルソー、コメニウス、デューイ
(ア) 「人は子どもというものを少しも知らない。子どもの中に大人の姿を求め、子どもが大人になる前にどのようなものであるかを少しも考えない」と述べ、子どもの発達段階の固有性と、それぞれの発達段階に応じた教育のあり方を提案した。
(イ) 人間精神の「進歩」に揺るぎない信頼を寄せ、すべて市民は「真理を知る平等の権利」を有するという立場から、教育を「人間精神の発展を保障し、社会的不平等を減少させるための手段」とみなし、「公教育は人民に対する社会の義務」であるがゆえに、教育はすべての市民に平等に与えられなければならないとした。
(ウ) 『大教授学』の「人間は、人間になるべきであるとすれば、人間として形成されなければならぬこと」の中で「人間として生まれた者には、すべて教育が必要である。」と述べた。
(エ) 人間の思考には、一つの対象に興味を集中して、そのものの観念を明らかにする「専心」と、一つの専心を他の専心と結合する「至思」とがあるとした。教授の順序はこの思考の進行にしたがって考えなければならないとし、明瞭、連合、系統、方法の四段階に分析した。
【選択肢】コメニウス、ルソー、コンドルセ、ヘルバルト