ちょっと復習
前回の記事でロックとルソーの話をしました。消極教育を提唱したのはどちらだったか覚えていますか?
…ルソーですね。ルソーは著書『エミール』の中で子どもの発達段階に合わせ、ガンガンと教え込むのではなく子どもの持っている力を引き出す「消極教育」と呼ばれる実践を展開しています。一方のロックの方は「紳士教育」と呼ばれる、小さい頃から大人として必要なことを教える教育を推奨しています。
まとめると、ルソーは子ども主体、ロックは教師(教える側)主体の教育理論ということができるでしょう。
今回の記事ではルソー、ロックそれぞれの思想の延長線上にある教育家を2名紹介します。
ルソーからペスタロッチ、ロックからヘルバルトへ
ペスタロッチ(1746-1827,スイス)は、著書『ゲルトルート児童教育法』の中で、曖昧な直観から明瞭な概念へと導く「直観教授」の方法を提唱しています。直感力を大事にしたという意味で、教師よりも子どもが主体の考えと言えます。
また、ペスタロッチは子どもの学習と農場労働を一体化した貧民学校の経営に取り組んだ人で「民衆教育の父」ともよばれています。貧しい人々はまずは経済的に安定することが重要ですから、労働と組み合わせる形で教育を行うという手法は(当時の社会状況を考えれば)合理的な実践ですね。著書『隠者の夕暮れ』の中で「王座の上にあっても木の葉の屋根の影に住まっても同じ人間」という有名な言葉を残しています。金持ちも貧しい人も人間としては変わらない!というわけですね。
・『ゲルトルート児童教育法』
・ 直観教授
・『隠者の夕暮れ』
・「王座の上にあっても木の葉の屋根の陰に住まっても同じ人間」
ヘルバルト(1776-1841, ドイツ) の実践で有名なのはなんといっても『一般教育学』内に登場する四段階教授法(明瞭-連合-系統-方法)です。教師がどういう方法で教えるべきなのか、具体的手順を示した点で画期的でした。教える側が主の教育理論、ということでペスタロッチの直観主義と対比させて覚えておくとよいでしょう。(実際にはヘルバルトはペスタロッチの教育実践に大きく影響を受け、直観教授に関する本を書いているぐらいですから、対立しているというわけではありません)
・『一般教育学』
・ 四段階教授法
「教育されなければならない」カント、世界初の幼稚園フレーベル
カント(1724-1804, ドイツ)は哲学者として有名ですね。彼は大学で教員をしていた際に、教育学の授業をもつこともあったようで、その際の講義ノートから『教育学』を著しました。カントって哲学のイメージでなんとなくお堅いイメージがありませんか?(ブログ主だけかもしれませんが)。 『教育学』の中でそのイメージ通り、「人間は教育されなければならない唯一の被造物である」とやはりお堅い言葉を語っています。カントに関しては次の言葉を覚えておけば十分です。
「人間は教育されなければならない唯一の被造物である」
フレーベル(1782-1852, ドイツ)は世界初の幼稚園を作ったことで有名です。フレーベルという人名を聞いたら幼稚園!と連想ができるようにしておきましょう。主著は『人間の教育』。
・世界初の幼稚園
・『人間の教育』
演習
(演習1)
次のア〜エの記述は、教育に関わる人物について述べたものである。どの人物について述べたものか、選択肢の中から選べ(2015年実施36)。
(ア)その著書の中で、「王座の上にあっても木の葉の屋根の陰に住まっても同じ人間」と述べた。
(イ)その著書の中で、「人間は教育されてなくてはならない唯一の被造物である」と述べた。
(ウ)その著書の中で、「教育は普遍的でなければならない、つまり、すべての市民に広められなければならない」と述べた。
(エ)教育過程の理論は、「明瞭、連合、系統、方法の四段階となる」と説明した。
【選択肢】カント、ルソー、フィヒテ、ペスタロッチー、コンドルセ、ヘルバルト
(解)
(ア)木の葉の屋根の影に住む人=貧しい人にも教育をっていうのは民衆教育の父、ペスタロッチですね。
(イ)この言葉はカント
(ウ)これは前回記事で扱った、公教育を広めようとしたコンドルセです。
(エ)四段階教授はヘルバルトですね。
(演習2)
次のア 〜オは、近現代の教育の中で、大きな影響を与えた教育者に関連する事項である。ア〜オにあてはまる人物の組合せとして正しいものを(2008年実施37)
(ア)「プラグラティズム」「道具主義」「実験主義」「進歩主義教育」「探求における問題解決の過程」
(イ)「徳」「教育の三領域(管理、訓練、教授)」「教育的教授(明瞭―連合―系統―方法)」
(ウ)「幼児教育」「子どもの園」「人間の教育」「恩物Gabeと呼ばれる教育遊具」
(エ)「民衆教育」「隠者の夕暮れ」「リーンハルトとゲルトルート」「教育の原理(自発性の原理―方法の原理―直観の原理―調和の原理―社会の原理)」
(オ)「エミール」「自然の教育」「自然に帰れ」「消極教育」
【選択肢】ルソー、ペスタロッチ、フレーベル、ヘルバルト、デューイ
(解)
勉強していれば確実に点数が取れる問題で受験生としてはありがたい限りです。
(ア)これはデューイです。今の時点では消去法で答えられればOKです。
(イ)教育的教授(明瞭―連合―系統―方法)からヘルバルトです。
(ウ)幼児教育や『人間の教育』からフレーベルです。
(エ)民衆教育、隠者の夕暮れなどからペスタロッチです。
(オ)エミールから余裕でルソーが選べますね。ルソーは前回記事で解説しています。
今回はここまでです!お疲れ様でした。