第4章 就学後の学びの場の柔軟な見直しとそのプロセス
1 基本的な考え方
就学時に,小学校段階6年間,中学校段階3年間の学校や学びの場が固定されてしまうわけではない。就学後の学びの場をスタートにして,可能な範囲で学校卒業までの子供の育ちを見通しながら,小学校段階6年間,中学校段階3年間の就学先となる学校や学びの場の柔軟な見直しができるようにしていくことが必要である。
そのためには,子供一人一人の発達の程度,適応の状況,各教科等の学習の習得状況,自立活動の指導の状況,交流及び共同学習の実施時間数の状況等を勘案しながら,学びの場の変更や転学ができることを,保護者を含めた全ての関係者の共通理解とすることが重要である。その上で,市区町村教育委員会が定期的に教育相談を実施し,個別の教育支援計画や個別の指導計画に基づく関係者による会議などを行い,それらの計画を適切に評価しながら,対象となる子供の教育的ニーズの整理と必要な支援の内容を検討・確認し,必要に応じて教育支援委員会等の助言を得つつ,就学先となる学校や学びの場の柔軟な見直しに努めていく必要がある。
なお,この場合についても,本人及び保護者と市区町村教育委員会や学校等間で就学先となる学校や学びの場の変更について合意形成が図られた後,最終的には市区町村教育委員会が,子供の就学先となる学校や学びの場の変更を決定するものである。
2 個に応じた適切な指導の充実
障害のある子供一人一人に応じた適切な指導を充実させるためには,各学校や学びの場で編成されている教育課程を踏まえ,個別の指導計画を作成し, 各教科等の指導目標,指導内容及び指導方法を明確にして,適切かつきめ細やかに指導することが必要である。
個別の指導計画は,学習指導要領において,通級による指導,特別支援学級,特別支援学校での作成が義務付けられている。また,通常の学級に在籍する障害のある子供等の各教科等の指導に当たっても,個別の指導計画の作成に努めることが示されている。
この個別の指導計画に基づいて,障害のある子供に対する各教科や自立活動等の指導が行われるが,子供一人一人の教育的ニーズと必要な支援の内容を踏まえた適切な計画であるかどうかは,実際の指導を通して明らかになるものである。したがって,個別の指導計画の計画(Plan)―実践(Do)―評価(Check)―改善(Action)のサイクルにおいて,学習状況や結果を適宜,適切に確認して評価を行い,それを踏まえた必要な改善を行うことが大切である。
(…後略…)
3 子供の教育的ニーズの変化の的確な把握
特別支援教育は,子供一人一人の教育的ニーズに応じて適切な指導や必要な支援を行うものである。このため, 子供の障害の状態等の変化に伴う子供一人一人の教育的ニーズの変化を的確に把握するとともに,その変化にも継続的かつ適切に対応するため,特別支援学校や小中学校等において個別の教育支援計画や個別の指導計画のP-D-C-Aサイクルの充実に努める必要がある。
また,個別の指導計画のP-D-C-Aサイクルの中で蓄積される子供一人一人の学習状況や結果についての検証は,就学後の学びの場の見直しにつながる重要なものであることから,学校だけに任せるのではなく, 市区町村教育委員会を起点に関係者が適時・適切に関与し,必要に応じて都道府県教育委員会や特別支援学校が市区町村教育委員会等の求めに応じて専門的助言等を行うことのできる体制づくりも必要である。
4 継続的な教育相談の実施
子供の教育的ニーズの変化に応じた適切な教育を行うためには,就学時のみならず就学後も引き続き,保護者との教育相談を行う必要がある。ただし,継続的に教育相談を行うことが,保護者によっては精神的あるいは生活上の負担と受け止められる場合もあることから,これらの相談は,保護者を説得するためのものではなく,子供の成長を確認し,喜び合うものであるという認識が共有されるように努める必要がある。(…中略…)
また,障害のある子供は,学校に加え,放課後等デイサービス等で過ごす時間も長い場合があることから,子供の成長や課題等について総合的に把握することができるよう,学校や教育委員会関係者が,日常的に放課後等デイサービスの事業者等との連携を図ることも,継続的な教育相談を行う上で有用である。
また,教育支援委員会等については,早期からの教育相談や就学先決定時までの支援のみならず,子供の就学後の学びの場の変更等についての助言も,その役割に含まれることに留意する必要がある。
5 在籍校と教育委員会が連携した学びの場の変更 略
6 学びの場の見直しに当たっての本人及び保護者との合意形成 略
第5章 適切な支援を行うにあたって期待されるネットワークの構築 略
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