3 今日的な障害の捉えと対応
(1)今日的な障害の捉え方(ICF)
従前の「特殊教育」においては,子供の障害の種類や程度に応じてきめ細かな対応を行う観点からの教育が行われてきた。この場合の障害については,疾病等の結果もたらされる器質的損傷又は機能不全による種々の困難があり,これらのことによって一般の人々との間に生ずる社会生活上の不利益等と捉えられていた。これは,昭和55 年に世界保健機関(WHO)によって採用された,国際障害分類(ICIDH:International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps)に基づいた捉え方であり,「医学モデル」と呼ばれることもある。
これに対してWHOは,従来のICIDHの改訂作業を行う中で,障害のある人だけでなく,障害のない人も含めた生活機能分類として,平成13年に,「国際生活機能分類(ICF:International Classification of Functioning, Disability andHealth)」を採択した。ICFでは,障害の状態は,疾病等によって規定されるだけではなく,その人の健康状態や環境因子等と相互に影響し合うものと説明されており,すなわちICFは,疾病等に基づく側面と社会的な要因による側面を考慮した,「医学モデル」と「社会モデル」を統合したモデルとされている。
これに関連して,平成 23年に改正された障害者基本法においては,障害者は「身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」とし,いわゆる障害者手帳の所持に限られないことや,難病に起因する障害は心身の機能障害に含まれ,高次脳機能障害は精神障害に含まれることが規定された。なお,障害者が日常・社会生活で受ける制限とは,心身の機能の障害のみならず,社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものという考え方,すなわち,いわゆる「社会モデル」の考え方踏まえた障害の捉え方については,WHOにおいてICFが採択されてから,引き続き, 「障害者差別解消法」やユニバーサルデザイン 2020行動計画等においても「障害の社会モデル」の考え方が大切にされていることに留意する必要がある。(…後略…)
(2)障害の種類や状態等と就学先決定の在り方 略
(3)合理的配慮とその基礎となる環境整備
① 基礎的環境整備等
(…前略…)
合理的配慮の充実を図る上で,基礎的環境整備の充実は欠かせない。そのため,必要な財源を確保し,国,都道府県,市区町村は,インクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として,基礎的環境整備の充実を図っていく必要がある。
また,令和3年4月には,「高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法) 」の改正法の施行等により,一定規模以上の新築等を行う場合にバリアフリー基準適合義務の対象となる施設に,従来対象だった特別支援学校に加え,公立小中学校等が追加された。こうした法改正等も踏まえ,特別支援学校の基礎的環境整備の維持・充実を図りつつ,特別支援学校以外の学校の基礎的環境整備の充実を図ることが重要である。同時に,基礎的環境整備を進めるに当たって,ユニバーサルデザインの考え方も考慮しつつ進めていくことが重要である。
(…後略…)
② 合理的配慮の定義等
合理的配慮は, 「障害者の権利に関する条約」第2条の定義において提唱された概念であり,その定義に照らし,我が国の学校教育においては,中央教育審議会初等中等教育分科会報告において,合理的配慮とは,「障害のある子どもが,他の子どもと平等に『教育を受ける権利』を享有・行使することを確保するために,学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり,障害のある子供に対し,その状況に応じて,学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの」であり,「学校の設置者及び学校に対して,体制面,財政面において,均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。なお,障害者の権利に関する条約において,合理的配慮の否定は,障害を理由とする差別に含まれるとされていることに留意する必要がある。
(…後略…)
③ 合理的配慮の決定方法・提供 略
④ 合理的配慮の観点 略
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