【解説061】発達の要因。環境優位説のワトソン、成熟優位説のゲゼル、輻輳説のシュテルン、環境閾値説のジェンセン

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今回は発達に関する理論。内容を対比させながら整理すれば難しくない。

環境優位説のワトソン

ワトソンは前回記事にも登場した、心理学を「こころ」でなく「行動」からとらえようとする行動主義心理学の創始者である。人間内部の「こころ」よりも外に現れる「行動」を重視していた彼は、人の発達は生後の環境によって規定されるという環境優位説を唱えた。環境こそが大事だと唱えるワトソンは、「自分に12人の健康な赤ん坊とその子どもたちを育てるための特別な環境を与えてくれるならば、その子の才能、好み、傾向、人種に関わりなく、医者でも、法律家にでも、必要とあれば乞食にでも、盗賊にでも育て上げることができる」という言葉を残している。(ずいぶんと批判されたようであるが)



成熟優位説のゲゼル

ワトソンとの対比で覚えておくべきなのが、ゲゼルの成熟優位説である。

双子の赤ん坊の実験で、階段の登り降りの訓練を早くから取り組ませても効果が低い一方で、身体的に十分な時期がくると短期間で階段の登ることができるという実験結果から、ゲゼルは環境よりも、遺伝的に組み込まれたプログラムによる成熟を重視した。

なお、学習を行うための発達の準備状態をレディネスという。上の実験では身体的な発達がすすむことで階段の登り降り動作に対するレディネスが整ったため、動作の習得ができたと考えることができる。

AとBのどっちが大事かという話をしだすと、大抵の場合AもBも大事だろ!という人がでてくるものである。

「環境」か「成熟」かという話の後に出てくるのは、どっちも大事じゃね?という考えた輻輳説のシュテルンと環境閾値説のジェンセンである。

輻輳説(ふくそうせつ)のシュテルン

難しい言葉が出てきたが、輻輳(ふくそう)とは単純化して言えば集まってくるという意味である。輻輳説とは、環境要素と成熟(遺伝)要素が集まって(合わさって)発達につながることを意味する。(ちなみに私は「シュッて(=シュテルン)集まって(=環境要素と成熟要素によって)発達する」と暗記して今でも覚えている。)

環境閾値説のジェンセン

環境も成熟も大事だというのは上のシュテルンと同じであるが、ジェンセンの環境閾値説では、各特性が発達するかはその環境の条件がある基準を超えたときだけであるとした。ちょっと環境を良くするとそれに応じて発達もよく進むという単純なものではない。例えば絶対音感が発達するにはきわめて豊かな環境条件が必要であることが挙げらている。



では演習。

(演習)

次の文の(  )に適する人物名を、次の選択肢の中からそれぞれ選べ。

【選択肢】ワトソン、ゲゼル、シュテルン、ジェンセン

(1) (     )は、発達において、遺伝的な要因により生徒の経験による学習の影響を重視した環境説を唱えた。

(2) (     )は、遺伝的要因を重視する学説と環境的要因を重視する学説を折衷して、発達が、遺伝的要因と環境的要因の加算的な影響によるとする「輻輳説」を提唱した。

(3) (     )は、人間の資質が発現するためには環境の影響が必要であるが、心身の特性の発達に影響する環境条件は心身の特性の種類によって異なり、環境条件が一定の水準を超えた場合には、心身の特性は正常に発達していくとする環境閾値説を提唱した。

(4) 一卵性双生児の兄弟X児とY児に階段上りの訓練を実施した。X児は、生後46週間目から6週間にわたって階段上りの訓練を実施した。この時点で訓練を受けていないY児は、訓練を受けたX児より階段登りに2倍近くの時間がかかった。しかしY児は、53週間目から2週間の訓練で、X児とほとんど変わらない速さで階段を上れるようになった。このことから(     )は、学習を成立させるためには、心身の機能が成熟し、学習を成立させるための準備状態が整う必要があり、準備状態が整う以前の学習は効率が悪く、たとえ多くの訓練を行ってもその効果はあまり期待できないとする成熟優位説を提唱した。

(解)

(1) →ワトソン (2) →シュテルン (3)→ジェンセン (4) →ゲゼル

今回は以上!

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