今回は18世紀から19世紀にかけての大物3人。
ペスタロッチ(1746-1827) スイス
ペスタロッチはルソー(前回の記事で扱ってます)の影響を受けまくっている。子どもの学習と農場労働を一体化した貧民学校の経営に取り組むなど、早くから貧民に対する教育に力を注いだ人物といってよいだろう。
ペスタロッチのポイント
- 『隠者の夕暮』
→「玉座の上にあっても木の葉の屋根の影に住まっても同じ人間、その本質からみた人間、そも彼は何であるか」 - 「生活が陶冶(とうや)する」
「玉座の上にあっても木の葉の屋根の影に住まっても同じ人間、その本質からみた人間、そも彼は何であるか」は、人間の本質はどんな境遇でも(金持ちでも貧乏でも)同じであるということで、貧民教育へ視点があったことがわかる言葉である。また、「生活が陶冶(とうや)する」は、家庭教育の重要性を表した言葉である。
ペスタロッチは、教育の方法としては曖昧な直観から明瞭な概念へと導く「直観教授」を重視した。教師が主になってガンガン教え込んでやろうよりは、子どもの直観力を大事にしたという点で、前回記事で扱った、ルソーの影響を強く受けた教育家であったといってよいだろう。なお、ここでは『隠者の夕暮』のみしか紹介していないが、ペスタロッチは他の教育者よりも多数の有名な教育実践書・啓蒙書がある。特に、『リーンハルトとゲルトルート』『シュタンツ便り』『ゲルトルート児童教育法』あたりはおさえておくとよいだろう。
ヘルバルト(1776-1841) ドイツ
ペスタロッチの子どもの直観力を大事にした方法と、大きく雰囲気の異なる思想。
19世紀前半、学校教育が普及していくにあたり、ヘルバルトは、教師の技術(「教育的タクト」)の習得を、科学によって準備しようと試みた。彼は『一般教育学』の中で、四段階教授法(明瞭-連合-系統-方法)という教授過程を提唱した。教育的な行為を時間軸上に系統立てて法則化しようとしたのだ。教える側の立場からする、と新米の教師でも一定の段階を踏んで指導すればある程度の教育効果が期待できる点が歓迎されたようである(時代が進むと、その方法が子どもが主体でないということで批判されることになるわけだが…)。
ヘルバルトの思想の継承者として、ツィラー(1817-1882)、ライン(1847-1929)いる。ツィラーはヘルバルトの思想を発展させ五段階教授法を考え、その後のラインがその五段階教授法を完成した、と言われている(予備-提示-比較-概括-応用)。ヘルバルト-ツィラー-ラインの3人はヘルバルト派として、セットで覚えおこう。
ヘルバルトのポイント
- 『一般教育学』
→四段階教授法、「私は、教授のない教育などいうものの存在を認めないし、また、逆に、教育しないいかなる教授も認めない」
フレーベル(1782-1852) ドイツ
1800年またぎの3人目として、世界初の幼稚園(ドイツ語でキンダーガーテン)を作ったことで有名なフレーベルを紹介する。フレーベルは人生の出発点としての幼児期を重視し、幼稚園で幼児のための遊びの道具である「恩物」を考案した。フレーベルの思想はつっこんでいくと「教育は人間と神との合一にまで導かなければならない…」などと解釈がやや難しいところがあるようで、知識としてはこの程度でよいと思われる。
フレーベルのポイント
- 世界初の幼稚園(キンダーガーデン)
- 教育遊具「恩物」の考案
- 『人間の教育』
では演習。
演習問題
次の文の( )に適する人物名を、次の選択肢の中からそれぞれ選べ。
(1) ( )は、対象を明瞭な表像として捉え、一つの表像と他の表像を対比して連合させ、それらを全体の秩序に系統付け、それを実践の方法として活用する4段階の教授段階を提唱した。主著は「一般教育学」。
(2) ( )は、「人は教育によってのみ人になり得る」として、教育の目的は人間性の完成であると主張した。
(3) ( )は、人が調和的に発達できるようにするため、生活の中で鍛えることを教授法のねらいとし、人間の直観をあらゆる認識の基礎とする直観教授法を提唱した。主著は「隠者の夕暮れ」。
(4) ( )は、幼稚園の創始者として知られており、幼児の系統的遊具を創案し、この遊具を神の賜与物の意味でガーべ(恩物)と名つけた。
【選択肢】ペスタロッチ、カント、フレーベル、ヘルバルト
解説
今回はここまで。
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