[50/50]適応機制(防衛機制)について。合理化、投射、同一視、抑圧、補償、代償、昇華、反動形成、退行など。

今回は適応機制の話。欲望のままにやりたい放題のエスと、道徳性を持った超自我との間の調整を行うのが「自我」の役割だが、ときに負担が大きい状態になると、自我を守るための行動をとることがある。これを適応機制という。

適応機制(防衛機制)は、文献によって(訳し方の違いなどに伴う)表現の揺れ・(説明する人の個性が反映された)解釈の仕方が多数あり、結果として教員採用試験でも自治体間で用語の扱いに多少のブレがある。以下は、全国の教員採用試験の過去問基準で、どの自治体でもほぼ対応できるような形で整理している。

適応機制・その1

  1. 合理化
    …理屈をつけて正当化すること。自己の不満や矛盾について、自我を傷つけない受け入れやすい理由によって正当化する。
  2. 投射
    …自分の中の認めたくない感情を他人が持っていると認知する機制。自分のネガティブな気持ちを相手へ"投射"するわけである。例えば(自分が嫌いなだけなのに)「あの人は私のことを嫌っている」などが投射に当たる。
  3. 同一視
    …自分の理想としている他者の価値観や態度を取り入れ自己と同一視し、同化しようとすること。取り入れとも。流行しているアイドルのファッションを真似ることなどが当たる。
  4. 抑圧
    …自分が経験した不快な体験や認めがたい観念などを、無意識の世界に追いやること。

「同一視」はとくに初期の段階の場合は「取り入れ」ともいう。また、「投射」は「投影」ともいう。

適応機制・その2

  1. 補償
    …ある面での自己の不満を他の面で努力してカバーすること。「スポーツが苦手な分、勉強は頑張る」というようなことである。
  2. 代償
    …ある目標を達成しようという欲求が叶えられないとき、その欲求が向けられている対象と類似した別の対象に置き換えることで欲求不満の解消をすること。「アメリカへ旅行へ行きたいがいくお金がないので動画を観て満足しようとする」

補償と代償は似ており、はっきりと区別せず出題する自治体もあり、厳密に使い分けをしなくても困ることは少ないと思われる。一応、区別するポイントとしては、自分に対して劣等感があるか(補償)・ないか(代償)。

適応機制・その3

  1. 昇華
    …社会的に受け入れられない欲求を社会的、文化的に価値の高い目的に向けて努力すること。「愛児を捨てた親が心の傷を児童教育書に託し思想家となる」など。
  2. 反動形成
    …自己がもつ感情があらわになるのを避けるために、正反対の行動や態度をとること。「好意をもつ相手にあえて意地悪な態度をする」など。
  3. 退行
    …解決することが困難な状況で、より未発達な段階の適応をすることによって安易な解決を図ること。赤ちゃんがえりなど。
  4. 逃避
    …文字通り現実の困難な状況から逃げる消極的な機制のこと。特に、空想の逃避は白昼夢とよばれる。

では演習にうつろう。

演習問題

次の文の(    )に当てはまる語句を【選択肢】の中から選べ。
(1) 劣等感による緊張の解消を図るために、自分のほかの望ましい能力を強調して心理的安定を図ろうとすることを(     )という。
(2) 自分の欠点や弱点に劣等感を抱いていることを認めず、他の人に映し出して、あたかもその人がもっているものであるかのようにみなして行動することを(    )という。
(3) 自分の本当の動機を隠して、自分の行動やおかれている状況を正当化し、自己防衛を図ることを(     )という。
(4) 社会的に認められない欲求を、別の社会的・文化的に価値の高い目標に向け換えることで、満足を得ようとすることを(     )という。
【選択肢】反動形成、合理化、投射、補償、昇華

解説

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