「生徒指導提要」は小学校から高校までの生徒指導の理論、実際の指導方法について網羅的にまとめた基本書で、2010年に発表されました。
発表から8年が経っているものの、現在でも生徒指導・教育相談に関する話題で全国各地の教採でも出題されています。事例が豊富に載っており、また値段も定価300円ほどと安いです。教採でも現場入りしてからも役立つものですから、一度すべてに目を通しておきたいものです。
「生徒指導提要」は全8章、以下のような構成です。
①生徒指導の意義と課題
②教育課程と生徒指導
③児童生徒の心理と児童生徒理解
④学校における生徒指導体制
⑤教育相談
⑥生徒指導の進め方
⑦生徒指導に関する法制度等
⑧学校と家庭・地域・関係機関との連携
今回は、生徒指導提要にもある生徒指導の意義、教育相談の意義についてみていきましょう。
生徒指導の定義、意義については第1章の最初に書かれています。
生徒指導とは、一人一人の児童生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めることを目指して行われる教育活動のことです。すなわち、生徒指導は、すべての児童生徒のそれぞれの人格のよりよき発達を目指すとともに、学校生活がすべての児童生徒にとって有意義で興味深く、充実したものになることを目指しています。 生徒指導は学校の教育目標を達成する上で重要な機能を果たすものであり、学習指導と並んで学校教育において重要な意義を持つものと言えます。
各学校においては、生徒指導が、教育課程の内外において一人一人の児童生徒の健全な 成長を促し、児童生徒自ら現在及び将来における自己実現を図っていくための自己指導能力の育成を目指すという生徒指導の積極的な意義を踏まえ、学校の教育活動全体を通じ、 その一層の充実を図っていくことが必要です。
生徒指導は、社会的資質と行動力をアップさせるのが目的なわけですね。
教育相談については第5章にかいてあります。
中学校学習指導要領解説(特別活動編)によれば、「教育相談は、一人一人の生徒の教育上の問題について、本人又はその親などに、その望ましい在り方を助言することである。 その方法としては、1対1の相談活動に限定することなく、すべての教師が生徒に接する あらゆる機会をとらえ、あらゆる教育活動の実践の中に生かし、教育相談的な配慮をする ことが大切である。」とされています。
すなわち、教育相談は、児童生徒それぞれの発達に即して、好ましい人間関係を育て、 生活によく適応させ、自己理解を深めさせ、人格の成長への援助を図るものであり、決して特定の教員だけが行う性質のものではなく、相談室だけで行われるものでもありません。
これら教育相談の目的を実現するためには、発達心理学や認知心理学、学校心理学など の理論と実践に学ぶことも大切です。また、学校は教育相談の実施に際して、計画的、組織的に情報提供や案内、説明を行い、実践することが必要となります。
教育相談は、「好ましい人間関係を育て」、「生活によく適応させ」、「自己理解を深めさせ」、「人格の成長への援助」を図るものとされています。
生徒指導と教育相談の違いについても書かれています。
教育相談と生徒指導の相違点としては、教育相談は主に個に焦点を当て、面接や演習を 通して個の内面の変容を図ろうとするのに対して、生徒指導は主に集団に焦点を当て、行事や特別活動などにおいて、集団としての成果や変容を目指し、結果として個の変容に至 るところにあります。
生徒指導は集団、教育相談は個に焦点があるということですね。
(演習)
(演習1)
次の記述は、「生徒指導提要」(平成22年3月文部科学省)「第1章生徒指導の意義と原理 第1節 生徒指導の意義と課題」からの抜粋である。空欄[ ア ]〜[ エ ]に当てはまるものを選択肢から選べ。(2017年実施33)
1生徒指導の意義
生徒指導とは、一人一人の児童生徒の[ ア ]を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や[ イ ]を高めることを目指して行われる教育活動のことです。すなわち、生徒指導は、すべての児童生徒のそれぞれの人格のよりよい発達を目指すとともに、学校生活がすべての児童生徒にとって有意義で興味深く、充実したものになることを目指しています。生徒指導は学校の[ ウ ]を達成するうえで重要な機能を果たすものであり、[ エ ]と並んで学校教育において重要な意義を持つものと言えます。
【アの選択肢】 権利、人格
【イの選択肢】 決断力、行動力
【ウの選択肢】 教育目標、生活目標
【エの選択肢】 教育相談、学習指導
(解)[ア]人格 [イ]行動力 [ウ]教育目標 [エ]学習指導
(演習2)
次の記述は、「生徒指導提要」(平成22年3月文部科学省)「第5章 教育相談 第1節 教育相談の意義」からの抜粋である。空欄[ ア ]〜[ エ ]に当てはまるものを選択肢から選べ。(2017年実施44)
教育相談は、児童生徒それぞれの[ ア ]に即して、好ましい[ イ ]を育て、生活によく適応させ、自己理解を深めさせ、人格の成長への援助を図るものであり、決して[ ウ ]だけが行う性質のものではなく、[ エ ]だけで行われるものでもありません。
【アの選択肢】人格、発達
【イの選択肢】 規範意識、人間関係
【ウの選択肢】 特定の教員、養護教諭
【エの選択肢】 保健室、相談室
(解)[ア]発達 [イ]人間関係 [ウ]特定の教員 [エ]相談室
今回はここまでです。