ハヴィガーストは人生を6つの段階
乳幼児期、児童期、青年期、壮年初期、中年期、老年期
にわけ、個人が健全に成長し、社会に適応するため、各発達段階で達成しなければならない課題を示しました。
ハヴィガーストの発達課題は、各段階ごとに10前後ずつもあり、それをそのまま全部丸暗記するのは無理でしょう。そこで、覚えるべき段階を特に重要な1.乳幼児期、2.児童期、3.青年期、4.壮年初期と4つのみにし、また課題も必要最低限のみに絞って整理することにしましょう。
1.乳幼児期
・食べる、話す、排泄するなどの学習
・善悪の区別、良心の学習 …など
2.児童期
・同じ年頃の仲間とうまく付き合う学習
・読み書き計算の基本的技能の学習 …など
3.青年期
・男性または女性としての社会的役割の獲得
・両親や他の大人からの情緒的自立
・身体的変化を受け入れて身体を有効に使うこと …など
4.壮年初期
・就職、配偶者の選択、結婚、子どもの養育
・適切な社会集団の発見 …など
教採受験者ができるようにすべきことは、各発達段階をみて課題を言えるようにすることではなく、課題をみて、それがどの発達段階のものか答えられるようにすることです。次のように考えると良いでしょう。
課題はどの時期のものか?判断方法
乳幼児期の課題…小学生になるまでにできるようにしておきたいこと
児童期の課題……小学生のうちにできるようにしておきたいこと
青年期の課題……中高生のうちにできるようにしておきたいこと
壮年初期の課題…社会人になってからのこと
上のような基準で先ほどの発達課題を見返してみましょう。
・食べる、話す、排泄するなどの学習
・善悪の区別、良心の学習
は内容的に小学生よりも前で習得しておきたいこと=乳幼児期の課題、と判断できると思います。善悪の区別もこの時期であることに注意しましょう。
・同じ年頃の仲間とうまく付き合う学習
・読み書き計算の基本的技能の学習 …など
は小学生のうちに習得しておきたいこと=児童期の課題と判断できるでしょう。内容的に、乳幼児期にはやや厳しいですし、中高生ではじめて出てくる課題とも言いにくいものだと思います。
・男性または女性としての社会的役割の獲得
・両親や他の大人からの情緒的自立
・身体的変化を受け入れて身体を有効に使うこと …など
は中高生のうちに習得しておきたいこと=青年期の課題と判断できるようにしましょう。小学生のうちは親に依存するような状況も仕方ありませんが、中高生で「情緒的自立」が課題となります。また、身体も大人の状態に近づいていくことを踏まえて「身体を有効に使う」ことができるようになるわけですね。青年期の特徴と絡めて覚えておきましょう。
・就職、配偶者の選択、結婚、子どもの養育
・適切な社会集団の発見 …など
は社会人以降=壮年初期の課題と判断します。「適切な社会集団の発見」は、社会人になり、触れる世界が広がったことで、自分に合う社会集団を探せる状況になったから、と考えるとどうでしょう。
では、確認としてハヴィガースト単独出題の問題を1問扱います。難しいです。
(演習)
(演習1)
次の記述ア〜オの記述は、ハヴィガーストが示した各発達段階における発達課題について述べたものである。発達段階と発達課題の組合せとして最も適切なものを、下の①〜⑤のうちから選びなさい。(2016年実施39)
ア 両親や他の大人から情緒的に独立すること
イ 適した社会集団を見つけること
ウ 友だちと仲よくすること
エ 善悪を区別することの学習と良心を発達させること
オ 自分の身体の構造を理解し、身体を有効に使うこと
①児童期…エ 青年期…ア
②児童期…ウ 青年期…イ
③児童期…オ 青年期…ウ
④児童期…ウ 青年期…オ
⑤児童期…オ 青年期…ア
(解)→④
1つずつみていきましょうか。
ア 両親や他の大人から情緒的に独立すること
→これは中高生あたりでできるようにしたいこと=青年期と判断します。
イ 適した社会集団を見つけること
→壮年初期の課題です。
ウ 友だちと仲よくすること
→これは小学生ぐらいでできるようにしてほしいこと=児童期と判断します。
エ 善悪を区別することの学習と良心を発達させること
→善悪の区別は小学生より前でできるようにしてほしい=乳幼児期の課題です。
オ 自分の身体の構造を理解し、身体を有効に使うこと
→身体を有効に使うということから青年期と判断します。
この問題は青年期の課題が2つ(アとオ)あり、それだけでは選択肢が①④⑤の3つにしか絞れず、最終的にはウ,エ,オのうち、ウのみが児童期の課題であると判断できなくてはなりません。想像ではありますがこの問題は正答率が低かったのではないでしょうか。
今回はここまでです。