【易しめ解説09】エリクソンの心理社会的発達理論8段階

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発達理論は各段階の順番と内容をよくおさえていなければ正答できないものが多いです。今回はエリクソンによる8段階の発達理論を整理しましょう。

エリクソンの心理社会的発達理論では、各発達段階ごとに、「〇〇対△△」という形で危機とその危機が克服できなかった場合に積み残すことになる問題点が示されています。なお、「危機」という言葉はここでは「ちょーやばいことが起きている」という意味ではなく「克服すべき課題」ぐらいの意味で使われています。



例えば乳児期の「基本的信頼感 対 不信」は、「基本的信頼感」が危機すなわち克服すべき課題で、この克服に失敗すると「不信」という問題を抱えてしまうということになるという要領です。基本的には〇〇の反対のワードが△△に入ることになります。

では8つの段階をみてきます。一通り目を通してみてください。

1.乳児期…基本的信頼感 対 不信

→生まれたてなので、環境(=育てる親など)に対する信頼感が必要。失敗すると不信感をもつ。

2.幼児前期…自律性 対 疑惑

→自分で自分をコントロールしている実感をもつことが必要。失敗すると自己嫌悪で自分を恥じたりする。

3.幼児後期…自主性 対 罪悪感

→自発的に行動する力をもつこと必要。失敗すると不満感をもち、罪悪感につながる。

4.児童期…勤勉性 対 劣等感

→どのように理解するかなどの学習能力をもつことが必要。失敗すると劣等感をもつ。

5.青年期…同一性 対 同一性拡散

→自我同一性の確立が必要。失敗すると自分がどの方向に進めば良いのかわからないという同一性拡散の状態に陥る。

6.成人初期…親密性 対 孤独

→他者を愛する能力が必要。失敗すると愛情関係形成ができない。

7.成人期…生殖性 対 停滞

→家族や社会、次世代への関心が必要。失敗すると自己のみへの関心しかもてない。

8.老年期…統合性 対 絶望

→人生全体としての完成感をもつことが必要。失敗すると死への絶望感をもつ。

上8つの危機のうち、最も重要なのが 5.青年期の自我同一性の確立です。「自分とは何か」「自分はどこからきたのか」「自分はどこへ行くのか」という問いの答えを見つけることであり、アイデンティティの確立ともいいます。

上記の「青年期=自我同一性(アイデンティティ)の確立が課題」という部分は特に押さえておくべきです。また、念のため、8つの発達段階がざっと思い出せるようにしておきましょう。負担の少ない暗記をするためには5.青年期の前後で分けると良いと思います。

5.青年期より前に登場する、1.乳児期、2.3.幼児期(前・後)、4.児童期における危機は

基本的信頼→自律性→自主性→勤勉性

です。基本的信頼感はまぁ生まれたての状態ですから親などに対する信頼感だろうとうことで思い出せるでしょう。あとの3つ、自律性、自主性、勤勉性については基本的には自分自身に関係している能力つまり「自分のこと」が危機である、とおさえてはどうでしょうか。



一方、5.青年期よりあとに登場する6.7.成人期、8.老年期における危機は

親密性→生殖性→統合性

です。親密性、生殖性というのは自分のことというよりは社会・次世代への関心ということですね。5.青年期を境に関心が「自分のこと」から「社会・次世代のこと」へ移っているとおさえておくと記憶の助けになるかもしれません。また最後の統合性は人生の振り返りという感じから思い出せるでしょう。

では、演習です。

(演習)

(演習1)

次の記述の空欄[ ア ]と[ イ ]に当てはまるものの組合せとして最も適切なものを、下の①〜⑤のうちから選びなさい。(2017年実施38)

エリクソンは、人間は生まれてから死ぬまで生涯にわたって発達すると考え、人生を8つの発達段階に分け、各段階における心理・社会的危機を設定した。そのなかで、児童期の心理・社会的危機は[ ア ]であり、青年期の心理・社会的危機は[ イ ]である。

①ア 信頼対不信     イ 勤勉性対劣等感

②ア 主体性対罪悪感   イ 自律性対恥・疑惑

③ア 同一性対同一性拡散 イ 主体性対罪悪感

④ア 勤勉性対劣等感   イ 同一性対同一性拡散

⑤ア 自律性対恥・疑惑  イ 信頼対不信

(解)

④。青年期の同一性対同一性拡散の知識だけで解けてしまいますね。

(演習2)

エリクソンの発達段階説で示されている各発達段階とその課題の組合せとして最も適当なものを、次の①〜⑤のうちから一つ選びなさい。(2010年実施41)
①幼児期―基本的信頼 対 不信
②児童期―自律性 対 恥・疑惑
③青年期―同一性 対 同一性拡散
④成人期―自発性 対 罪意識
⑤老年期―親密性 対 孤独

(解)

③。これも(演習1)と同じような答えでごめんなさいって感じなんですが、とりあえずエリクソンの8段階では青年期の自我同一性だけ知っておけばOKじゃねと感じ取ることができますね。なお、受験生は一応間違いの選択肢を正すことができるようにもしておきたいところです。

①幼児期―基本的信頼 対 不信
→基本的信頼は生まれたての乳児期の危機ですね。幼児期では自律性や自主性が危機です。
②児童期―自律性 対 恥・疑惑
→小学校段階に相当する児童期では勤勉性が危機ですね。
④成人期―自発性 対 罪意識
→青年期以後については自発性(自主性)など自分のことよりも社会や次世代のことが危機になるのでしたね。成人期の危機は親密性あるいは生殖性です。
⑤老年期―親密性 対 孤独
→老年期は人生の総まとめ的な時期ということで統合性が危機になります。

最後に、記事内で扱っていない用語ではありますが、エリクソン関係ということで1問。

(演習3)

次の文の[   ]にあてはまる語句として最も適当なものを、次の①〜⑤の中から一つ選びなさい。(2007年実施39)
青年は、多かれ少なかれ自我同一性の混乱を経て、「自分らしい自分」つまり自我同一性を確立していくのであるが、現代社会では、そのためにかなり長い時間を必要とし、その間しばしば大人としての義務や責任をはたすことを免除された状態にある。
これをエリクソン(Erikson, E.H.)は、[   ]と呼んだ。
①コンピデンス ②モラトリアム ③レディネス ④アニミズム ⑤ホスピタリズム

(解)

②。これはエリクソンのことはおいておいて、一般的にもたまーに使う言葉だろうと思います。

なお、レディネスは準備が整った状態のことを表す言葉で学習分野ででてきます。

今回はここまでです。お疲れ様でした。

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